2024年7月16日(火)

中国メディアは何を報じているか

2014年6月10日

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【解説】

上海市で開かれたアジア信頼醸成措置会議(5月20、21日)の際には上海市内で厳重な警備体制が敷かれた。重要な政治イベントの際に厳重な警備体制が敷かれるのが恒例になっている(東南網5月15日)
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 中国国内でテロと呼べるような無差別殺傷事件が多発するにしたがって警官による銃器使用の敷居(しきい)も下がりつつあるようだ。通り魔事件のように市民の命が危険に晒される場合には犯人に対してすぐに発砲して制圧することが奨励されるようになっているのだ。

 しかし、本文で紹介したように警察の銃使用について慎重な声も存在しており、警官たちには銃使用をためらう気持ちが広く存在しているという。法治がある程度徹底されてきた日本社会に暮してきた我々からすると、中国での暴力事件の多発とそれに対する高圧的な警察や軍の態度ばかりが注目されてきたから、本文のような銃使用を巡る議論が本当に存在するのであれば、ホッとさせる部分もある。

 そうはいっても武装警官やSWATが町中にあふれ厳戒態勢にある様子を見るにつけ、中国という国の政治体制が「改革開放」政策の実施に伴って市場化が進み、より透明で自由な社会をもたらすのではないかという我々の淡い期待はいかに楽観的すぎたかをいやというほど思い知らされる。

 メディアの一部に警察の銃器の「濫用」に疑問を呈する傾向があったとしても、軍や警察を中心に治安維持の強化や「反テロ」取締りの声は強く、習近平政権はそうした声に便乗して仰々しく治安維持強化を図っている。既にここ数年は治安維持費が国防費を上回っており、こうした状況は警察力強化の傾向が加速していることを示唆する。

 とはいえこうした力による治安維持が人々の不満を解消するとは到底思えない。陳情者を銃で射殺するなどもってのほかだ。社会の不満を無理やり力で押さえつけるだけでなく、不満を生じさせる問題の根本解決を目指してほしいとつくづく思う。

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