ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官(左)とジェイムズ・コーミー元連邦捜査局(FBI)長官
ドナルド・トランプ米大統領と対立したジェイムズ・コーミー元連邦捜査局(FBI)長官およびニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ州司法長官が、トランプ政権になって偽証罪などで起訴された件について、ヴァージニア州の連邦地裁は24日、起訴が「無効」との判断を示した。政府による臨時の検察官の任命手続きが違法だったと、裁判所は判断した。
トランプ政権は9月、コーミー、ジェイムズ両氏の訴訟担当として、ヴァージニア州東部地区の臨時検察官にトランプ氏側近のリンジー・ハリガン弁護士を任命した。連邦地裁のキャメロン・カリー判事は今回の判決で、この任命手続きに法令上の問題があり、そのため検事としてのハリガン氏のその後の訴追行動はいずれも「行政権の違法な行使」であって無効だと判断を示した。
ハリガン氏は、米議会への偽証罪などでコーミー氏を、銀行詐欺などの罪でジェイムズ氏を、それぞれ起訴していた。
コーミー氏とジェイムズ氏は一貫して無実を主張し、自分たちへの起訴は政治的な動機によるものだとしていた。
今回の連邦地裁判断を受け、ホワイトハウスはBBCに「コーミーとジェイムズに対する起訴の事実は変わっていない。この問題はこれでおしまいとはならない」とコメントした。
コーミー氏とジェイムズ氏に対する捜査は当初、トランプ政権がヴァージニア州東部地区の臨時検察官に任命したエリック・シーバート氏が担当していた。しかし、シーバート検事は今年9月、コーミー、ジェイムズ両氏の起訴を求める政権の圧力に懸念を示して辞任した。政権はその後、トランプ氏の個人弁護士ハリガン氏を後任に任命した。ハリガン氏はそれまで、刑事事件で起訴した経験がなかった。
今回の判決でカリー判事は、司法省がハリガン氏を任命した時、政府が臨時検察官を任命できる期限はすでに切れていたと指摘。120日間のこの期限はシーバート氏が今年1月21日に任命された時に始まり、今年5月21日に切れたため、司法長官はその時点で臨時検察官を任命する権限を失ったと判事は説明。そのため、9月22日に任命されたハリガン氏はそれ以降、臨時検察官の職務を「違法に遂行していた」のだと判事は指摘した。
連邦地裁は、司法省が今後、検察官を適切に任命すれば、2人を同じ罪で再び起訴できるとしている。
ただし、コーミー氏が起訴された罪状については、司法省が9月末に起訴した数日後に、時効が成立している。
コーミー、ジェイムズ両氏の起訴に先立ち、トランプ氏はソーシャルメディアなどでパム・ボンディ司法長官に対し、行動を起こすよう強く求めていた。トランプ氏はコーミー、ボンディ両氏らについて「全員とんでもなく有罪だ」、「今すぐただちに正義を実行する必要がある!」などとも、ソーシャルメディアに書いていた。
コーミー氏は2016年の大統領選をめぐり、ロシアがトランプ氏を有利にしようと介入した疑惑の捜査を率い、2017年5月にトランプ氏によってFBI長官を解任された。ジェイムズ氏は、トランプ氏が経営する企業が不正に利益を得ていたとして訴えた民事裁判で、2023年にトランプ氏に勝訴した。
ヴァージニア連邦地裁のこの日の判決後、コーミー元長官は「悪意と無能に基づく」起訴が終わったことに感謝していると述べたが、「ドナルド・トランプはおそらく再び私を狙うだろう」とも話した。
ジェイムズ長官は声明で、「今日の勝利をうれしく思う」と述べた。「根拠のない一連の訴追に直面しても、私は今も恐れず、ニューヨーカーのために毎日戦い続ける」とも強調した。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、ハリガン検事の任命は合法で、連邦地裁判事がコーミー、ジェイムズ両氏を「守ろうとした」と述べた。
(英語記事 Judge dismisses cases against ex-FBI director Comey and NY attorney general James)
