妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、蒼井優、長澤まさみ、橋本愛……日本を代表する若手俳優を配した、かつての映画でいえば「オールスター・キャスト」のフジテレビ水曜ドラマの「若者たち2014」。
宮部みゆきの杉村三郎シリーズのTBS月曜ミステリーシアター「ペテロの葬列」は、資産家の娘を妻に持つ杉村役の小泉孝太郎が主役である。
家族をめぐるふたつの夏改編のドラマを並行して観てきた。若手俳優たちが火花を散らす「静」と「動」の演技について魅せられる。
冷静な演技、静かな語りで進行する「ペテロの葬列」
「ペテロの葬列」のなかで、小泉孝太郎はその主人公・杉村の冷静な演技とともに、独白ともいえる静かな語りによって、ドラマを進行させていく。
杉村は元出版社の編集者である。今多コンツェルンを率いる今多嘉親(平幹二朗)の娘とも知らずに付き合い始め、妻の菜穂子(国仲涼子)と結婚、義父に命じられてグループ広報室で社内報の副編集長の地位にある。
取材にいった帰りのバスが、拳銃をもった老人(長塚京三)によって、バスジャックされる。杉村と編集長の園田瑛子(室井滋)、編集部員の手島雄一郎(ムロツヨシ)と、中小企業の経営者ら8人が人質となる。
バスジャック犯の老人は、交渉相手となった警察官に対して、3人の男女を現場に連れてくるように要求する。その間に、彼は人質たちに奇妙な約束をする。事件が終了したあとに、賠償金を支払うというのである。
杉村は老人によって、人質たちが不安になるどころか、彼の言葉によって完全に支配されていることに気づく。ひとり編集長の園部だけが、うずくまったまま不安と恐怖にかられている。
人質は順次解放され、バスから降り際に園部は老人にこういう。
「わたしはあんたのようなひと知っている」
老人は答える。
「わたしは彼らとは違う。しかし、お詫びしなければならない。申し訳ない」と。