テレビ朝日の「相棒」シリーズは、シーズン12となって、2000年のプレシーズンと合わせると200本以上のドラマを積み重ねてきた。このコラムのシリーズで「右京はキャラハンかコロンボか」と題して、名作推理ドラマに対するオマージュ(敬意)という視点からその魅力の源泉を探ってみた。過去のシリーズの再放送にはまってしまったからだ。
「相棒」シリーズの主要な作品のほとんどを観たのではないか、と胸を張れるようになったのはつい最近のことである。
日本を代表する女優たちが演じる犯人との対決
シーズン12の第8話(12月4日放映予定)「最後の淑女」のゲストスターは、岩下志麻である。「相棒」の出演は初めてではないだろうか。このドラマシリーズに関しては多数の解説本が過去に出ているばかりではなく、ノベライズつまり小説化もなされている。「相棒学」ともいえる愛好家に対して、謙虚に敬意を払わなければならない。
杉下右京(水谷豊)は過去にどれほど、日本を代表する女優たちが演じる犯人と対決してきたことだろう。フランス文学の教授だった岸恵子が、別荘の密室事件を企てる。杉下は学生時代に彼女の授業を受講している。フランス語で詩の一節を暗唱し合いながら、ふたりの間に静かな知的なゲームが展開する。
長山藍子が演じたのは、過激派の爆弾づくりを手伝った、恋人が誤爆で死んだ復讐のために、爆弾づくりを依頼した男性を殺そうとする翻訳家である。
登場人物たちの過去が、
最新シリーズにも織り込まれる
シリーズ12の初回特別編「ビリーバー」で、警視庁捜査一課の刑事トリオのなかから、三浦信輔刑事(大谷亮介)が警視庁を辞職した。事件にからんで足を刺されて不自由となり、捜査活動が難しくなったからだ。「警備会社にでも再就職する」と三浦は、病院に見舞いにきた右京に寂しそうに告げるのだった。
同僚の伊丹憲一(川原和久)と芹沢慶二(山中崇史)のトリオの中では、ベテランのいぶし銀のような存在である。
別の事件では、外資系企業の聞き込みに3人で行って、英語ができることがわかり、伊丹と芹沢を驚かせるシーンもあった。