2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2013年12月4日

 「よっ、暇か?」と声をかけて、右京の特命係の部屋に入ってきては、勝手にコーヒーを注ぐ、組織犯罪対策第5課長の角田六郎(山西惇)の人生なら、初期のシリーズで知っている。最近のシリーズでもときどき妻の悪口が出るが、恐妻家である。

 鑑識係として右京を助ける、米沢守(六角精児)は、妻が失踪したままだ。映画化された「絶対絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン」(2008年)では、妻にそっくりな女性の殺人事件が発生する。

 登場人物たちの過去が、さりげなく最新シリーズに織り込まれていることは、「相棒」ファンにとっては、この作品の奥深さを味わう瞬間でもある。

あまりにも大きい「相棒」ワールドの全体像

 前回の第7話「目撃証言」(11月27日放映)は、殺人事件のきっかけが過去に起こった老女の自転車による死亡事故の際に、偽証があったことがわかる。それによって、無実の罪に服した男が復讐を遂げて、その証言者を殺す。ドラマは、二重ラセンのように、もうひとつのテーマが隠されていて、ラストシーンで明らかになる。その偽証を誘導したのは、捜査に当たっていた刑事だったのである。

 悲劇に向かうドラマは、毎回のようにその独創性をましているようにみえる。

 右京がいきつけの小料理屋「花の里」のシーン。どうして偽証にいたったのか、疑問を語る右京に対して、女将の月本幸子(鈴木杏樹)は「わかるような気がしますね」とつぶやく。

 月本は殺人未遂事件を起こして服役、そして、別の女囚の脱獄に巻き込まれる事件にも遭遇している。月本をめぐるいくつかの作品は、女優の鈴木杏樹の代表作のひとつといってよいだろう。出所後、右京の離婚した妻の宮部たまき(益戸育江)が経営していた店を継いだ。旅にでた宮部が、店を閉めた後、再開まで右京が仕事を終えていき場所を失くして、推理のさえを失くすエピソードもあった。

 5分間でわかる「相棒学」――などと意気込んではみたものの、「相棒」ワールドの全体像はあまりにも大きい。「だめですねぇ、君は……」と右京が、歴代の相棒をたしなめる声が、わたしにも聞こえるようだ。

 「最後にもうひとつ」と、右京の決め台詞のマネを振ってから、水谷豊のあくなき挑戦について述べてみたい。


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