「あとひとつよろしいですか?」
水谷豊が演じる警視庁特命係の警部、杉下右京が犯人を追いつめる質問を放つ。
テレビ朝日のヒットシリーズ「相棒」はシーズン11が今春終了して、いまは平日の午後に過去のシリーズが再放送されている。
その視聴率は回によっては、この時間帯としては異例の10%を超える。週間の視聴率のドラマ部門でベスト10に入ることもある。
プレシーズンは「土曜ワイド劇場」で2000年6月から3回。シーズン1は2002年10月から放映されている。杉下右京の相棒役は、初代の亀山薫(寺脇康文)から神戸尊(及川光博)、甲斐享(成宮寛貴)と代わった。
「殺人ワインセラー」
幕切れまで緊張感が途切れない展開
シーズン5「殺人ワインセラー」、2006年12月に放映された作品を観る。相棒は寺脇康文演じる亀山である。
高層マンションからの飛び降り自殺を装って、高利貸しの社長が殺害される。この社長が融資をしている、佐野史郎が演じるワイン評論家・藤巻は、フランスの高級ワインを揃えた大きなセラーを有するレストンを経営している。
藤巻はかつてソムリエを務めていて、ワインの試飲会で参加者の評論家たちのいたずらで、高級なワインと偽って安いワインを飲まされ、高級なワインと判断を誤った過去がある。
この屈辱をバネにして、ワイン評論家として地位を築き上げた藤巻は、高利貸しの社長との会食で、彼が選んだワインが食事と合っていないことを指摘して恥をかかせた。
自分が受けた屈辱と、他人に与えた屈辱が重なり合う。
「あとひとつよろしいですか?」
藤巻とその妻に対して、右京は事件のあった夜にふたりが自宅で飲んだワインの種類を何度も尋ねるのである。