2026年9月10日(木)

スポーツ界の新潮流

2026年9月10日

 セカンドキャリアの支援について、コロナ禍を挟んで試合ができなくなったこともあり、「トライフープ岡山」(2026~27シーズンBリーグ・ワン昇格のプロバスケットボールチーム)と一緒に取り組みました。現役選手が、現役の間にセカンドキャリアについて真剣に考え、関心のある業界で実際に長期インターンシップという形で働いてみるというものです。 

「重要なことは、一人ひとりの興味・関心や人生設計に、オンデマンドで対応すること」と話す高岡さん(SPORTS DRIVE)

 21年当時のトライフープはまだB3で規模も小さく、働きながら選手をやっている選手、家族を持って将来に対して不安を持つ選手もいました。

 当社と大学生を地元企業に長期インターンシップとしてマッチングする「c0mpus(コンパス)」という会社と共同で、まず選手にヒアリングをしました。どんなことに関心があるのか、引退後はどういう職種・業種に就きたいのかを詳しくヒアリングして、クラブにも報告します。その内容をもとにコンパスがインターン先の企業候補を提示し、選手に「こんな企業があるけど、どうか?」と提案します。

 志望企業が決まったらインターンスタートです。期間中も定期的にモニタリングやカウンセリングをして、長い人は4カ月、短い人で1カ月ほど。終了後はリポートをクラブに返します。インターン先の企業がトライフープの応援やスポンサー契約につながる可能性も見据えた設計です。セカンドキャリアを真剣に考えている選手ほど、練習終わりに企業の仕事に行ったり、午前中仕事して午後の全体練習に参加したりしていました。

 マッチングで重要なことは、一人ひとりの興味・関心や人生設計に、オンデマンドで対応することです。「どこか当たればいいよね」程度の話では、一人ひとりには響かない。網を広げるのではなく、一人ひとりと向き合うことが大事だと思います。

岡山の経験が次につながる

 我々は単に岡山に残ってもらうために行っていたわけではありません。それを声高に言い出すと、選手側には、岡山に引き止められるという意識が芽生え、むしろやりにくくなる。そうではなく、岡山でプロ選手としてやった経験が次の人生のステップにとっていい出会いにつながったと思ってもらえることこそが大切なのです。

 それが回り回って岡山のことが好きになり、「トライフープはいいクラブだった」と、選手の口コミが広がることで、いい選手の獲得につがる─。そのようなイメージです。

 ただ、トライフープが成長して、プロクラブとして確立するにつれて、セカンドキャリアのことをあまり考えない選手が増えたという現実もありました。いつ引退するか分からないという選手が多い時代から、トップ選手が多くなってきたことで、セカンドキャリアに対するニーズが小さくなってきました。

 本来は「プロアスリートだったからこういう能力が発揮できる」という活躍の場が外の社会にどんどん広がれば、安心してプロスポーツ選手を目指せるようになるはずです。

 例えば海外の選手だと、現役中に資格を取ったり、並行して勉強したりします。ヨーロッパのサッカークラブはジュニア年代でも「学校の成績が落ちたら試合に出られない」というルールがあったりします。だからトップ選手もちゃんと勉強してきている。

 日本の「一つのことに集中しないと成果が出ない」という根性論や「道」の精神が、実はスポーツ選手の可能性を狭めている面があると思います。

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Wedge 2026年9月号より
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ

大谷翔平、三笘薫、北口榛花、阿部詩、八村塁、松山英樹……。世界で活躍する日本人選手がここ最近、増え続けている。国内では、スポーツの力をまちづくりへ生かそうと、スポーツ界・民間・行政の連携も広がっているほか、新たな競技の普及も進んでいる。一方、少子化などの課題は競技人口にも影響を及ぼし始め、精神論や根性論など「昭和的価値観」の指導のあり方も見直され始めた。まさに、日本スポーツ界は変革の時を迎えている。新潮流を、日本社会へどう生かしていくか─。32年ぶりに日本でアジア大会が開催される今、その可能性を探りたい。


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