日本の「軍国主義」については、中国側は高市早苗首相就任以来、「新軍国主義」との批判を強めてきていただけに、今回のトランプ大統領の「米中同盟国」発言は,中国側に好感を持って受け止められたことは間違いない。
現に、習近平氏は、トランプ発言を受けて「中米両国はともに(日本の)ファシズムの侵略に立ち向かった。この歴史を両国民は決して忘れない」などと応じた。
さらに、首脳会談後の同日夜の晩さん会でも、「中米両国は80年以上前、日本の軍国主義の侵略者に対抗した。このような両国の友情は、世代を超えて受け継がれる」として、日本を意識した両国の“連帯”を力説した。
「同盟」と「友好」の線引きができていない
問題は、トランプ氏がなぜ、このタイミングで、米中関係を論じるのに過去の日本との関係を持ち出したか、だ。しかも、米中首脳会談のわずか2日前には、高市首相がニューヨークでトランプ氏と会談したばかりだった。
この日米首脳会談で、高市首相はトランプ大統領に対し「日米同盟に非常に力強くコミットしてくれていることに感謝する」と述べた。これに対し、トランプ氏は「あなたは歴史に名を残す素晴らしい日本の首相になるだろう」などといったリップサービスで応じた。
首相側近も会談終了後、「米中首脳会談前の『布石』に手応えがあった」と評価した。
高市首相は、去る6月下旬、ワシントンでの日米首脳会談でも、冒頭発言で「世界の平和と繁栄をもたらすことができるのはドナルドだけだ」と、根拠の乏しい最大級の賛辞をトランプ氏に送っている。しかし、今回の米中首脳会談では、その「強固な日米関係」はまったく蚊帳の外に置かれてしまったことになる。
その背景には、トランプ氏にとって、「同盟関係」と「友好関係」との間に明確な線引きができていないことがある。
米政府は戦後の外交政策において、一貫して両者の違いを力説してきた。筆者自身、カーター、レーガン、クリントン各大統領時代、ワシントン特派員として、ホワイトハウスや国務省、国防総省を取材してきたが、当時、安全保障担当の政府高官たちは報道陣を前にしたブリーフィングや記者会見の場で、「中国は友好国」「日本は同盟国」と念を押すようにその違いを説明してきたことをはっきり記憶している。
ところが、「実利」最優先主義に立つトランプ大統領にとっては、「同盟か友好か」は二の次の問題であり、最大の関心事は、経済を中心とした自国の利益追求にある。それが明確に示されたのが、今回の米中首脳会談だった。
