2026年10月2日(金)

プーチンのロシア

2026年10月2日

からくり2 狭義の「国防費」の外にも実質的な国防費が隠れている

 現行の26年ロシア連邦予算によれば、歳出の内訳はグラフのようになっている。赤で示した国防費は12.9兆ルーブルで、歳出の29.3%、GDP比5.5%に設定されていた。

 しかし、ロシアが実際に軍事部門につぎ込んでいる支出が、予算に示された狭義の「国防費」の枠には留まらないというのは、定説となっている。名目的な「国防費」の数字だけを見ていても、あまり意味はないのだ。

 たとえば、「安全保障・治安」は、ウクライナ侵攻・占領にかかわる費用を含んでいることが知られており、これを準軍事費と位置付けるのはもはや常識となっている。なので、グラフでも薄い赤で示した。

 それ以外にも、ウクライナ侵攻後に膨らんでいる軍人年金、軍人・家族への社会的給付などは、国際的な基準では国防費に算入されるが、ロシア連邦予算では「社会・文化措置」に紛れていると疑われている。さらに、軍需企業に対する研究開発、制裁への適応、産業・運輸・物流等の支援策は、「国民経済」費として扱われていると指摘されている。

からくり3 予算は見せても決算は見せない

 今日のロシア連邦財政では、予算制定時には、国防費の総額も示される。25年の例で言えば、当初予算では歳出が41.5兆ルーブルで、うち国防費は13.9兆ルーブルに設定されていた。

 結局、25年に実際に執行された歳出総額は、42.9兆ルーブルだった。問題は、決算が発表されるのは歳出の総額だけであり、その内訳は一切開示されないことである。25年にロシア連邦政府が実際に「国防費」(上述のようにあくまでも狭義のもの)をどれだけ使ったかは、闇の中なのである。

 ロシアにも一応は会計検査院というものが存在し、財政執行状況に関する報告書を毎年発表しているが、それを見ても国防費の実際の執行額は示されていない。

からくり4 2026年から歳出を「機動的に」増やせることになった

 25年までのロシアでは、財政状況が想定から外れると、年度中に連邦予算を修正する法律を採択していた。実際、25年には歳入欠陥が生じたことから、年度中に2度、予算修正法を採択した。国家行動を、予算法によって規律する姿勢が、まだぎりぎり残っていたと言えようか。

 ところが、ロシア連邦予算法典が本年改訂され、連邦政府は予算法を修正することなく、「機動的に」歳出や借入を拡大したり、歳出項目を組み替えたりできるようになったのである。国防省が「もっとくれ」とリクエストしてきたら、財務省は臨機応変に対応できるというわけだ。こうなると、そもそも国家予算というものに意味があるのか、疑わしくなってくる。

 政府の説明によれば、今回の措置は26年だけの特例とされている。しかし、戦況がロシアにとり一向に好転しない中、「機動的な」財政運営が常態化し、軍事費に歯止めがかからなくなると懸念する向きも多い。


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