からくり5 国防負担が連邦から地域に広がる
冒頭で紹介した通り、27年のロシア連邦予算では、「国防費」が17.1兆ルーブルで、対GDP比6.9%となっている。
一方、主要7カ国(G7)諸国では、国防費の対GDP比は概ね2~3%台である。ロシアの国防費が経済規模に比して大きいことは、一目瞭然である。
ただし、ここで注意しなければならないのは、27年にGDP比6.9%という数字は、あくまでもロシア連邦財政の国防費についてのものである点だ。ロシアは連邦国家であり、地域(州などのレベル)の財政もそれなりに大きい。そして、ここに来て連邦政府だけでなく地域行政府も国防関係のコストを引き受ける現象が広がっている。
最大のものは、契約兵に対する一時金の支払いである。前線での激しい損耗に苦しむロシアは、高額な一時金を提示して契約兵をかき集めようとしており、その財政負担を地域行政府が負う構造がある。
それ以外にも、本来なら国防省が調達してもおかしくない物資を地域予算で購入する仕組みが、明確に存在する。しかも、単なる州知事の善意や支援運動ではなく、制度化されている。
ロシア政府は22年10月の政府決定で、各地域が自己の予算を使って兵士のために物品を購入し、連邦政府側へ移管できる仕組みを設けた。ドローン、無線通信機器、暗視装置、自動車・同部品、軍服、医薬品・医療用品、食料、建設資材・工具などが対象になっている。
情報を総合すると、地域行政府が負担している国防費は、現状でおそらくGDPの0.5%程度に上っているのではないかとみられる。
からくり6 ドローン防御費を企業に負担させる
広く報道されているように、今年に入ってウクライナによるロシア本土への長距離ドローン・ミサイル攻撃が激化し、製油所や物流倉庫が深刻な被害を受けている。
本来であれば、プーチンが始めた戦争の報いなのだから、プーチン政権がロシア企業をウクライナの攻撃から守る義務を負うはずである。ところが、ロシア軍は政府関連施設、軍事基地などを守るだけで精一杯であり、民間企業の防衛まで手が回らない。
こうした中、7月に伝えられた情報によると、ロシア政府は企業が独自の防空体制を整備できる新たな制度を導入したということだ。だが実態は、企業は資金だけを負担し、対空砲、防空システム、電子戦装置、レーダー、特殊車両などを担当する軍部隊へ寄贈する形であるという。装備の管理・運用はあくまで国防省であり、実際に操作するのも軍の予備役部隊とされている。
そして、プーチン大統領が8月に署名した大統領令により、重要インフラ企業は自らドローン防御努力義務を負うことが明記された。防御や復旧を怠った企業は、国家管理に移管されてしまう。
政権幹部は、「これは一時的な外部管理に過ぎず、決して国有化などではない」と弁明しているが、昨今ロシアでは民間企業が国家接収の憂き目に逢う事件が頻発しているだけに、経済界には不安が広がっている。
ロシア企業はしばらく前から、防護ネット、コンクリート遮蔽、電子戦装置などの防御装備を導入していた。民間企業全体では、24年に約1000億ルーブルが、25年には約2000億ルーブルが防空装備へ投じられたという推計もある。実質的に、国防費が民間に押し付けられた形であろう。
