からくり7 優遇融資を通じて負担を先送り
ロシアでは、現時点で政策金利が14.0%に設定されている。こうした高金利では、企業が運転資金を確保するのもままならず、ましてや設備投資など夢のまた夢である。
ところが、高金利にも動じない部門がある。軍需産業だ。軍需企業には、政策的な配慮から、優遇策が講じられている。
産業・商務省は、軍需企業による投資資金の調達について、利払いの一部を連邦予算から補助する制度を実施している。国策金融機関のVEB.RFには、軍需企業向けの優遇融資制度があり、年利5%、最長20年といった有利な融資が受けられる。
他方、ロシアにおいて軍需産業との結び付きが非常に強いことで知られている銀行が、プロムスヴャジバンクである。同行が軍需産業への融資を拡大できるよう、政府は同行に定期的に資本注入している。
ただ、軍需企業向けの融資は一部で不良債権化しているとの見方もある。同行が深刻な問題に陥れば、結局は国が救済せざるをえない。
政策金融機関や銀行を通じた低利融資は、今の時点では国防費には計上されない。しかし軍需企業が返済できなくなれば、債務再編や資本注入などの形で、最終的に国家が負担を引き受けるしかない。実際、ロシアでは侵攻前にも軍需企業の巨額債務を国家主導で処理した前例がある。
一筋縄ではいかない
以上見てきたように、今日のロシアでは、連邦予算の「国防費」だけを見ていても、戦争にどれだけの資源が投入されているのか、その全貌を掴むことはできない。国防費そのものが大部分機密扱いされている上、軍事関連支出は安全保障・治安、社会・文化措置、国民経済など他の費目にも分散している。
年度途中での予算変更や、決算段階での情報開示の後退も、実態把握を難しくしている。さらに、契約兵への一時金や兵士・家族への支援、装備品の供与などを地域行政府が担い、企業もドローン対策などの防衛コストを負担する。軍需産業への政策金融も、将来の公的負担につながる可能性がある。つまり戦費の一部は、連邦政府の帳簿から地域や企業、さらには将来へと移されているのである。
「国防費はGDP比何%か」という数字は、もちろん重要だ。だが、それをもってロシアの戦争負担を測ることは、年を追うごとに困難となっている。国家・社会全体が実際にどれだけの負担を強いられているのか、幅広いアプローチで検証していく必要がある。
