2026年10月8日(木)

日本の農業論にモノ申す

2026年10月8日

工場閉鎖からの負のスパイラル

「地方に就職口がない」

 東北をはじめとした地方でよく聞く言葉である。高度経済成長期以降、円高や経済のグローバル化が進む中で、日本企業の海外進出が進んだ。地方では工場の閉鎖・縮小を引き起こし、若い人たちが働く場所を減らしつつある。

 このことは、地元の企業に勤めながら農業を続けてきた人々、すなわち兼業農家が地域からいなくなっていることも意味している。

 私たちがよく口にする「兼業農家」とは、実態としてはどのようなものなのか? あらためて振り返ってみたい。

 2015年まで、農家は、農業所得の方が兼業所得より大きい第1種兼業、兼業所得の方が農業所得より大きい第2種兼業、そして専業農家に分けられ、日本では販売農家の半数以上を第2種兼業農家が占めていた。

 現在は「第1種兼業農家」「第2種兼業農家」という区分による統計がなくなったため、かつての定義のまま現在の兼業農家数を把握することはできない。ただし、2025年農林業センサスでは、個人経営体約79.6万のうち、約51.9万が自営農業に年60日以上従事する65歳未満の世帯員がいない「副業的経営体」に、約8.7万が農業外所得の方が多い「準主業経営体」に分類され、計60.6万経営体と、個人経営体全体の約76%を占める。定義はかつての兼業農家とは異なるものの、農業だけを主たる仕事としない多数の経営体が、現在も日本農業を支えていることが分かる。

 農村部では、かつて大企業の工場や地元の中小企業などに勤めていた若い層は姿を消し、多くが東京をはじめとする都会へ出ていった。これは、兼業農家の担い手が減ることを意味しており、農家の高齢化にいっそう拍車をかけている。

 総務省が2026年9月に発表した推計では、65歳以上人口は3624万人と、前年から2万人増え、総人口に占める割合は29.6%と過去最高になった。農村部ではそれを超える超高齢化が現実である。

 近年、農業を牽引する「担い手」(認定農業者・認定新規就農者・集落営農など)が減り続ける中で、担い手に農地を集積させて「大規模化を進めればよい」という議論をよく耳にする。実際に、20ヘクタール(ha)以上の経営体が全経営耕地面積のほぼ半分を担っており、大規模化は進んでいる。

 しかし、大規模化だけで日本の農地すべてを維持できるわけではない。担い手への農地集積率は地域差が大きい。上位は、北海道92.9%、山形72.8%、佐賀72.5%、秋田71.9%と北海道や東北、北陸や九州の佐賀が高いのに対し、岡山30.2%、広島27.5%、奈良22.9%などと中国地方や関西、都市圏が低くなっている。(農林水産省 令和7年度 農地中間管理機構の実績等より)

 さらに、集積率が7割を超える東北や北陸の県でも、地域には小規模な農家や農業以外の仕事・所得を持ちながら農業を続ける人々が数多く存在する。こうした人々が農業を続けられなくなれば、特に中山間地域などでは農地や農村を維持することが一層難しくなる。


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