兼業農家の事例
兼業農家がどう現代社会に寄与しているのか、具体的な事例を挙げたい。筆者が22年末に訪問した兵庫県三木市の集落営農組織「殿畑営農組合」は、メンバー全員が兼業農家であった。
この地域では、平日はサラリーマンとして働き、土日だけ農業に携わる若い人もいる。こうした若い兼業農家が支える集落営農、そして農村のあり方は、これからの日本にとって非常に重要になっている。
三木市には21年当時53の集落営農組織があり、水稲を中心に地域農業を担っていた(三木市、農林水産省ホームページより)。その中の一つが「殿畑営農組合」である。
96年設立、組合員28戸は全て「第二種兼業農家」で、経営面積25ha。生産するのは酒米の山田錦が19ha、丹波黒大豆が6haという構成である。
兼業農家を組織化し、農地は集積せず、種まきや耕うんなど基幹作業を集積している。特定のオペレーターを決めず、その時できる人が作業する。初心者でも操作可能な直進アシスト機能付きトラクターや田植え機、ドローンなどスマート農業機械を活用して管理し、地域農業を維持している。個人が高価な農機を所有せず、組織の面積と作物に合わせた機械を共有していることが特徴だ。
山崎広治組合長は、「法人化した組織や大規模農業が強いのは、当然です。しかし、小さくても強い兼業農家もあります。どちらが良い、悪いということではありません。日本の農業には、どちらも必要だと思います。国にはバランスのとれた支援を期待したい」と、兼業農家主体の集落営農組織の意義を強調する。
26年4月には三木市が市職員の地域貢献型兼業の対象に「農業」を追加し、集落営農組織への勤務などを想定している。公務員の農業兼業を制度として認めたことは、兼業という働き方そのものの価値を農業内外に示している。(神戸新聞ホームページより)
個別経営の事例も見ていこう。日本の有機⾷品の市場規模は、09年の1300億円から、17年に1850億円、25年に3595億円と、着実に増加。有機農業者数も23年時点で約1.26万⼈と、日本全体の農業者数が減る中で少しずつ増えている。とりわけ、新たに農業を志す人が有機農業を目指すケースが多くなっている。(農水省より)
しかし、有機農業は大規模化が難しく、それだけで十分な所得を得るのは容易ではない。それは、有機農業を学んだ新規就農者が集まり、「有機の里」として知られている埼玉県小川町を長年にわたり牽引してきた故・金子美登さんも指摘していたことだ。
小川町では、行政や飲食店などの企業、生産者が協力しあう仕組みが作られているが、それでも有機農業だけで生計を立てるのは難しいという。たとえば、夫が農業を営み、妻が看護師として働くような兼業のかたちが、家計を支える上でやはり欠かせないと、金子さんは語っていた。(ウエッジオンライン2024年筆者記事「〈循環経済はどう実践する?〉やりたくてもできないエコシステムを成功させた埼玉県小川町の軌跡」)
