2026年10月8日(木)

日本の農業論にモノ申す

2026年10月8日

農業政策と産業政策は切り離せない

 これまで日本では、農業の競争力を高めるために、農地を大規模な担い手へ集約する政策が進められてきた。しかし、前述のとおり、山間部や条件不利地を含むすべての農地を大規模経営体だけで維持することは難しい。

 今回注目したいのは、農業以外の仕事を持ちながら農業も行っている「兼業農家」だ。現在、兼業農家の名称による統計区分はなくなっているが、農業と農外所得を組み合わせて暮らし、今も地域農業を担っている。

 兵庫県三木市の事例と埼玉県小川町の事例を以下にまとめる。

 二つの事例に共通するのは、「農業所得だけで生活すること」を前提にせず、地域農業の維持を考えている点である。これからの農業政策では、大規模な担い手を育成することと同時に、別の仕事を持ちながら農業に関わる人をどう地域に残すかという視点も必要になる。

 そのためには、農業政策だけを考えていては不十分だ。地域に企業や働く場所があり、そこで所得を得ながら農業にも携われる環境をつくる必要がある。つまり、農業政策と産業政策は今後切り離して考えることができないということだ。兼業所得を安定して確保するためには、地方の中小企業を強化し、地域に就業の機会を生み出すような産業構造を育てていくことも欠かせない。

 これからの「兼業農家」は、かつてのように平日は企業などで働き、週末に自らが所有する機械で農業に従事するといった従来の形態に留まらない。人口減少が進むこれからの日本では、今回紹介した2事例のように、経済的に無理のない形で、農業と別の仕事を組み合わせる生き方が、農地と農村を次世代につなぐ一つの現実的な選択肢になりうる。

 日本の農村や近隣に住む人たちに農業に興味を持って、農業生産に参画してもらうことが重要だ。農村の景観や環境の重要性を認識してもらい、農村維持にも貢献してもらうという考え方だ。

 異常気象が多発し燃油高騰など食料生産を取り巻く環境が厳しくなる中で、日本の食料安保の観点からも重要になるだろう。国土保全にも寄与することになる。

 地方に仕事をつくり、農業と別の仕事を両立できる環境をつくる。それが人口減少時代の日本およびそれを支える農業の方向性ではないか。

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