2024年も世界的に暑いようだ。4~5月、インド・パキスタンなどでは50度を超える猛暑になり、日本国内でも6月というのに35度を超える地域が出てきている。
異常気象など頻発する中で、地域資源を効率的に循環させ、温室効果ガスを削減し、持続可能を目指す「循環経済」が世界的に注目されている。日本国内でも「循環経済」の取り組みは行われてきているものの、点としての取り組みが多く、横に普及するには難しい。
そんな中、日本有機農業の発祥地とも言われている埼玉県小川町がまち全体の取り組みとして循環経済を成功させている。この仕組みは6月に台湾で開催されたセミナーで筆者が紹介したところ、アジア各国の官僚や研究者からも「大規模ではなく、アジア各国にもある小規模な生産者が行政、加工業者などと協力体制を作り上げて進めている理想的な形」と評価されている。
小川町の現場から、循環経済を継続させる仕組みや今後の普及のカギを考えてみたい。
有機農業を中心に循環経済を実践
〝小川町型〟地域循環型経済の発祥の地は、農薬・化学肥料を使わない有機農業を実施する霜里農場だ。
霜里農場は、小川町の下里地区で故・金子美登氏が1971年に有機農業を開始した。金子氏は日本の有機農業の第一人者として海外にも知られている。現在、畑1.5ヘクタール、田んぼ2ヘクタール、山林3ヘクタールで60種類の作物を栽培している。
金子氏の有機農業への取り組みは徐々に仲間を増やし、今では小川町が「有機農業の地」として知られるようになっている。この「霜里農場」を中心とした有機農業が地域内での循環経済の持続可能性と普及に大きく貢献している。
まず、小川町の多くの農家が豆腐粕など食品廃棄物や家畜の糞をバイオマス(再利用可能な有機性資源)として肥料に再利用している。この取り組みは、有機農業の一環ではあるが、ロシアのウクライナ侵攻後、化学肥料の価格が上昇するなかで、安価な肥料を入手できる方法として、農業界全体で注目されている。また、霜里農場では、人間の排泄物も液体肥料として利用されており、前述のコスト面とともに、農業内での循環型の農業システムが強化されている。