2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2024年7月11日

他地域や全国へ展開するには

 地域循環型経済モデルは、地元の生産者、消費者、企業が協力し合うことで成り立つ。この協力体制は、地域全体の持続可能な発展に寄与する。このような経済モデルが全国に広がりを見せられれば、地球温暖化や環境劣化に対する効果的な対策の一つになることが期待されている。

 このモデルは個々の活動ではなく、グループ活動として取り組まれることが重要であり、これにより地域全体の環境保護と経済の安定が図られないと、地域経済は継続できない。小川町の取り組みは、地域内で資源を循環させることにより持続可能な農業と経済を実現した形と言える。

 ただし、このモデルはどこでも真似できるわけではない。そのカギとして強いリーダーシップと行政のサポートが必要なことが見えてくる。

 小川町のリーダーであった金子美登氏は惜しまれながら2022年に他界した。金子さんは生前数々の名言を残している。「有機農業だけでは生活できず、夫婦のどちらかは、別の職業について家計を支えるのが現実的な選択」「米や野菜は毎日食べるもので、付加価値を付けて売ってはいけない」など。

 前述のとおり、小川町のような取り組みは個人ではなく、農業外の利害関係者を含め、集団で取り組む必要がある。行政を含めてこの地域を引っ張っていく金子美登氏のような強いリーダーシップが必要であろう。ただ、それを育成することは簡単なことではない。

 国は2050年までに日本全体としてカーボンニュートラルを目指している。地球温暖化が進み、地域の持続的な発展は急務で農村でもこの取り組みは欠かせない。

 小川町の事例は農業界では有名な取り組みであっても社会全体としてはまだあまり知られていない。まずはこのような取り組みがあることを日本国内の農業関係者だけなく、農村地帯のすべての住民に知ってもらう必要がある。

 その過程で農業、農業外にかかわらず、中長期的にリーダーになりうる人材を育成していくのが地道な方法だろう。また、類似の循環経済の取り組みをしている全国市町村のネットワーク化も欠かせない。

 そして、次のステップとして、日本だけでなく地球温暖化などに苦しむ発展途上国に対して、海外でも同様のプロジェクトを始められるように日本の経験を伝えていくべきだ。このことが発展途上国などの人々を支援することになり、ひいてはわが国の国際貢献につながると思う。

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