また、霜里農場では、農業機械やトラクターの燃料は廃油を活用したバイオディーゼル燃料(BDF)を利用する。これにより、外部からのエネルギー依存を減らし、地域内でのエネルギー自給を目指している。
こうした取り組みは、農家単体での継続は難しく、小川町役場が積極的に関わる。とくに2023年には、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取り組みを進める「オーガニックビレッジ」を宣言。島田康弘町長を代表とする小川町有機農業推進協議会が策定した「小川町有機農業実施計画」に基づき、有機農業の生産段階・流通・加工の取り組み、消費拡大への取り組みの推進を小川町全体で進めている。
たとえば有機肥料の製造では、里山の落ち葉等を活用した堆肥や学校給食残渣を活用した液肥等の生産体制の安定化および利用拡大を地域ぐるみで支援する。(「小川町有機農業実施計画」2023年3月、小川町有機農業推進協議会)
スマート農業も導入
霜里農場では天敵を維持し、害虫を抑制するためのコンパニオンプランツとして小麦が栽培されている。また、害虫に弱い野菜を虫よけネットで囲んで害虫から守る。天敵利用と虫よけネットは、露地の有機野菜栽培では必須の技術だ。
土壌表面を被覆するマルチもフィルムなどではなく、稲や麦のわらといった分解可能なものが使用され、廃棄物を出さずに、環境に配慮された農業を進める。
最近は新しい取り組みとしてスマート農業を導入する。その一つとして各生産者の栽培データを共有するために「アグリノート」というアプリケーションが使用されている。このアプリで、農家同士の情報共有が促進され、効率的な農業運営が可能となっている。
金子美登氏から霜里農場の運営を受け継いだ金子宗男氏は「アグリノートは、情報共有とトレーサビリティを目的にしており、作業工程を仲間と共有でき、記録として残せるようになった。有機農業を実践していることを販売先にも可視化して示すことができる」とメリットを語る。小川町の有機農家では、他のスマート農業も利用できないか、検討しているという。