大学による改変はこれが初めてではない
大学における人種に対する写真の改変は、これが最初というわけではない。2000年にウィスコンシン大学マディソン校において、新入生募集パンフレットの表紙写真において発覚した件が最も有名である。自校のアメフトチームに熱狂する観客席が白人学生ばかりの中、アフリカ系もいますよとばかりに黒人学生の写真を写真加工ソフトで合成して入れ込んで掲載したのだ。
その黒人学生によると、彼がたまたま入試事務室に立ち寄ったところ、職員の一人が寄って来て、「今年の入試パンフの表紙に載っている」と教えてくれたのだった。ところが彼はこれまでアメフトの試合になど行ったことがなかった。「それで見たら、自分の頭が切り取られて、入学案内書の表紙に貼り付けられているような光景が目に入ったんだ」と彼は当時のことを語っている。
事の真偽は、表紙写真の周囲の白人学生に当たる光の向きと、合成によって挿入された黒人学生に対する光の向きが異なるなど写真の不自然さによっても確かめられ、大学側は大量のパンフレットを印刷しなおすことになるとともに、大きく評判を落とした。
ウィスコンシン大学が謝罪に追い込まれて2週間もたたないうちに、アイダホ大学も同様の状況に追い込まれた。白人学生ばかりの写真において、1人はアフリカ系、もう1人はアジア系というように2人を差し替えて大学の公式サイトに掲載したことが発覚したのだ。はじめは、大学側は「悪意はなかった」といった言い訳に終始したが、結局は学長が謝罪するに至った。
これまでとは違うスタンフォード大の事例
大学側には常にキャンパスを魅力的に見せたいと考えており、時に実際以上にそう見せたいという誘惑にさらされている。施設のすばらしさに加えて、多様性に富んだキャンパスというのが多くの場合魅力的と考えられている。今回のスタンフォード大の件も、そのような流れの中の一つと言えるのかもしれない。
ただ、今回は2つの点でこれまでの事例からの変化が見て取れる。一つ目が、白人学生だけの中に、アフリカ系やアジア系を入れ込むことで多様性を表現していた以前とは異なり、アジア系、白人、ラテン系という既に多様性に富む集団を撮影しながら、それをさらに加工している点である。これは大学側が「より好ましい多様性」と考えるもの、すなわち自分たちに都合の良い多様性・公平性・包括性(DEI)を表現しようとしているのである。
