2026年10月8日(木)

Wedge REPORT

2026年10月8日

保育所には「休む」根拠がない

 幼稚園と保育所は、根本的に違う法律に基づく。幼稚園は学校教育法に基づく学校であり、文部科学省管轄の教育施設である。保育所は児童福祉法に基づく児童福祉施設であり、こども家庭庁(以前は厚生労働省)管轄の福祉施設である。ちなみに両者の間に立つ認定こども園は、認定こども園法によって学校と児童福祉施設の両方の性格を与えられている。

 学校は、学校教育法施行規則第63条に基づき、校長の判断で休校が可能である。しかし、総務省によれば、保育所等については、自然災害発生時または感染症流行時に臨時休園できる旨を定めた法令はない。禁じられているわけではないが、誰がどう決めるのかを書いた条文は存在しないのである。

 そこで総務省は18年11月、国に対し、臨時休園の実施基準についての考え方を示すよう勧告した。これを受けて厚労省は20年7月、事務連絡で「災害における臨時休園の在り方」を周知し、臨時休園の最終的な意思決定者を、保育の実施主体である市町村と整理している。

 災害時には、いわゆるエッセンシャルワーカーがその使命を果たすためにも、子ども達の預け先が必要である。預け先がなければ、医療や防災の現場そのものが回らなくなるおそれがある。

 子ども達の安全のために閉じるべきか、保育所の設置目的に沿って開けるべきか。基準がありながら千葉市の判断が揺れた原因は、その場限りの役所的な配慮ではない。日本の福祉制度がずっと抱えてきた究極のジレンマなのである。

(厚労省「災害における臨時休園の在り方」より) 写真を拡大

 実は、このジレンマをほどく方向を、国はすでに示している。先の厚労省の文書は、休園に備えて事前に決めておくべき事項に「代替保育が必要とされる家庭の把握と保育の代替措置の設定」を挙げ、防災関係者や医療関係者などには保育の提供を確保する必要性が高いとしている。閉じるなら、代わりに預かる場所を用意しておく、ということだ。しかし、それは法令ではなく、事務連絡による自治体へのお願いにとどまったのである。

コロナ禍の経験――学校が担ってきた福祉

 20年3月、新型コロナウイルス感染症対策として突然の全国一斉休校となった時、茨城県つくば市は、独自の対策をとった。もちろん感染状況によって対応は変化したが、仕事を休めない保護者を考慮し、基本的に休校でありながらできるだけ学校を開け続ける方針を採った。

 授業は実施しないが、教員が対応して自主学習を行い、給食も希望者に用意した。また、その後も働きに出る家庭の小学生を学童で受け入れることになり、学童の職員だけでは子どもを受け止めきれず、小中学校の教員が派遣された。こうした対策によって、小さな子どもを抱える保護者が働き続けられるようにしたのである。


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