子どもの数が減り続ける一方で、増え続けている数字がある。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に通う子どもの数である。こども家庭庁の調査(2024年)をもとに計算すると、小学生全体のうちおよそ4人に1人が登録しているという。しかし、小学1年生のみに限って見てみると、その数はおよそ2人に1人の割合にまで跳ね上がる。
「少子化が進んでいるのになぜ?」と思う読者があるかもしれないが、共働き世帯が全世帯の7割を超えていることを踏まえればすぐに合点がいくはずである。いまや、家計と子育てを両立させるため、もっと広く捉えれば日本の経済活動と少子化対策のために、学童保育は欠かせない「社会インフラ」であると言っても過言ではない。
そうであるにもかかわらず、日本の学童保育はあまりに多くの問題を抱えている。その実態をつぶさに解説しているのが『知られざる〈学童保育〉の世界』(寿郎社)である。いま解決すべき課題と、求められている支援は何なのか。同書の著者であり、学童保育運営支援アドバイザーとして現場を支える萩原和也さんに話を聞いた。
保育園と学童との「差」
見過ごされがちな論点
もともとは産経新聞社の記者として働いていた萩原さん。奥様も同業他社の記者であり、「子育ては至難の極致でした」と語る。
「15年前の3月、東日本大震災の時のことです。私が住んでいた地域には約25の放課後児童クラブがありました。ただ、私たち夫婦の仕事柄、子どもをすぐには迎えに行けなかった。その間待ち続けていた施設の職員も、自分の家庭の被害が心配で仕方なかったはずです。それでも、代わりに送迎へ向かってくれた友人が到着するまでの間、夜の8時頃まで、ずっと子どもに寄り添い、留まってくれていたんです」
こうした事例を一つとっても、学童保育が家計と子育ての両立に欠かせない存在であることは一目瞭然だが、入所希望者を受け入れるための整備はなかなか追いつかない。こども家庭庁の資料を見ると、全国の学童保育所における待機児童数は1万6330人(25年5月1日時点)。
さらに同書によれば、入所をあきらめて申請を行わなかった世帯の子どもや、民間事業者が運営する学童保育所に申請した結果入所が叶わなかった世帯の子どもの数などはこれに含まれておらず、国の調査結果の数字以上に、表面化していない「隠れ待機児童」が多数存在するという。
ただ、それとは対照的に、16年2月、匿名ブログに「保育園落ちた日本死ね」という強烈な書き込みが投稿されて以降、保育園の整備は急ピッチで進んだ。ピーク時(17年)に2万6081人いた保育園の待機児童数は2254人(25年4月1日時点)に減少している。学童保育所と保育園との間にある「差」について、萩原さんは次のように説明する。
「保育園は、市町村の保育義務を果たす児童福祉施設として児童福祉法に定められています。一方、放課後児童クラブは同法において、市町村が地域の実情に応じて実施できる『任意事業』という位置付けに過ぎません。この差が最大の問題であり、最大の弱点とも言えます。法律上の『義務』でない以上、行政機関は積極的に動けないのです。保育園と同じように、児童福祉施設として再定義すべきでしょう。
学童保育を必要とする子育て世帯が、自身の住む市町村の力不足の結果としてそれを利用できずに、泣く泣く仕事を諦め、キャリアを中断して家庭に入る、あるいは非常勤の仕事に変えざるを得ないような昨今の状況は、直ちに改善されるべきです」
