「雇用待遇の条件が低すぎます。2022年3月末時点で、職員一人あたりの賃金の年間支給額は、月給制の常勤雇用者で約285万円です。もちろん、賞与なども含まれます。この調査の対象者の平均年齢が47歳であることにも注意が必要ですし、対象を『公設公営』の学童保育所に絞ると、約239万円にまで数字が下がることも直視すべきです。
最近では、学校の教員不足に対して『教員養成課程の単位を減らす』などといった議論も散見されますが、同じように、『現場で働きたいと思える人が増えるような雇用労働条件を整備すればいい』だけの話です。職員が『生涯の仕事』として働き続けられるように、放課後児童支援員を職業として確立させることが不可欠です」
学童保育業界に迫る
「終わりのはじまり」
学童保育の発端は、保護者間の共同運営として自然発生的に誕生したことにある。児童福祉法のもとで全国各地に設置された保育園や児童館とは対照的な歴史を持ち、今でも保護者会が運営を担っている場合、組織運営は「ボランティア」頼みだ。行政としてはコストカットもでき、長らくその実態に甘えてきたことも否定できない側面がある。
しかし、この状況も長くは続かないと萩原さんは危機感を示す。
「従来は地域のしきたりなどに応じて保護者が対応すれば済みましたが、権利意識の高まりなどを背景に、事業の専門化も進みました。例えば、障害者の法定雇用率や女性活躍の公表、事業者の規模によっては労働基準法や労働安全衛生法など、守らなければならない法令も多岐にわたります。
さらに、『保護者運営の終わりのはじまり』とも言える制度が間もなく始まります。それが、2026年12月25日から施行される『日本版DBS制度』です。
いわゆる、子どもと接する業務に従事する人の性犯罪歴を事業者が確認する制度のことですが、学童保育は『任意事業』という位置付けである以上、その制度を受け入れるかどうかは任意で選ぶことができます。ただ、保護者の希望を汲めば、事実上、義務として制度を受け入れざるを得ず、職員の〝手弁当〟で対応しているところは太刀打ちできません。
例えば、波動的な労働力を確保する上で非常勤職員の確保は重要ですが、児童クラブで働きたいと思った人が自分で行う戸籍確認は煩雑な業務であり、負担は重くのしかかります。また、学童保育所の従事者は子どもと関わる場所以外に職場は少なく、仮に制度の対象者となった職員がいても配置転換は難しいのです。一方で、解雇を選べば訴訟リスクは著しく高まります。こうした懸念や早期対応の周知に、弁護士の鈴木愛子氏(鈴木弁護士事務所・愛知県弁護士会)とともに奔走していますが、なかなか広まらないのが実情です」
