2026年2月24日(火)

WEDGE REPORT

2026年2月24日

 ワシントンで開催されたトランプ米大統領自らが議長として監督する、パレスチナ自治区ガザの暫定統治機関「平和評議会」の初会合。日本を含む40以上の国・機関の代表者が出席し、ガザの治安維持を担う「国際安定化部隊(ISF)」にインドネシアなど5カ国が要員を派遣することが発表された。また、参加するアラブ諸国などが復興に向けた資金として計70億ドル(約1兆円)以上の拠出をすることが明らかにされ、米国も100億ドル(約1兆5000億円余り)の拠出をすると宣言した。

2月20日金曜日、ガザ市のテントキャンプで、イスラム教の聖なる月、ラマダン中に断食明けの食事であるイフタールに集まるパレスチナ避難民たち(AP/AFLO)

肝心のパレスチナの存在感はゼロ ガザ入りも叶わぬ技術官僚機構

 トランプ氏は「ガザや中東、世界の人々の明るい未来を実現するために共に取り組む」と高らかに宣言、出席した各国首脳らに対しては容姿やタフさを褒めるなど次々に謝辞を繰り出した。一方、ダボス会議の際に行われた発足時の盛大な式典に引き続き、今回もパレスチナ側の代表の姿は見られなかった。

 言うまでもなく、ガザの復興再建の議論に欠かせない主役は、パレスチナだ。

 だが、戦後統治において実際の民政を担うとされる、パレスチナ人主体の技術官僚機構「ガザ行政国家委員会(NCAG)」の陰は薄い。未だに拠点とするエジプト・カイロからガザ入りも叶っていないという現実に、「現地の状況も知らずにガザをどうやって統治するのか」などと、ガザ市民からは既に失望の声が沸いている。さらに、トランプ氏の積極的な言葉と共に目指される「ハマス後の新たなガザ統治」とは全く逆行する動きが、現地では起きている。

“トランプ和平案”と逆行――ガザで着々と存在感増すハマス

 今、ガザ現地からの声に耳を傾けると聞こえてくるのは、ハマスの存在感の高まりだ。

 トランプ氏は会議の参加者らに向けて、ハマスは武装解除する見込みだと強気に語ったものの、実際にハマスが武装解除する兆候は一向にみられない。それどころか、戦時中に失った統治能力の再編を停戦中に急速に進めており、筆者が複数のガザ市民に尋ねても、いずれも「ハマスが着々と現地で支配の手を強めている」、「到底、武装解除するとは思えない」との答えが返ってくる。

 事実、ロイター通信など複数のメディアも、ハマスが政府の主要な役割にメンバーを配置し、警察や治安部隊が再び街頭に出て敵対者を処刑するなど、イスラエル軍の一部撤退後の空白を迅速に埋めていると報じている。

 停戦交渉の第2段階では、イスラエル軍撤退と引き換えにハマスが武器を放棄し、統治から完全に撤退することが求められている。だが、イスラエル軍は1月下旬にネタニヤフ首相に提示した文書の中で、「ハマスは政府機関・治安機構・地方自治体に支持者を統合させる手段で、『ボトムアップ』からガザでの影響力と掌握力を維持することを目的とした措置を現場で進めている」と述べたことが報じられている。

 武装解除を一貫して拒否し続けているハマスが停戦期間を利用してガザでの影響力と支配の再確立に成功している現状は、トランプ米大統領が目指す和平案の展望とは真っ向から逆行する事態だ。

また、停戦合意後にガザ内の反対勢力に対して見せしめ的な粛清を行って以来(参考記事『ガザで武器収集進めるハマスとイスラエルの失態、テレグラムが語る“治安作戦” ハマス新治安部隊「ラダア(Radaa)」の実態』)、ハマスはイエローラインの内側で徴税にも注力してきた。戦争開始以降、資金繰りに窮するなか、ハマスは公務員や戦闘員に対して給与を支払うことなしには権力を維持出来ない。そのため、停戦合意後から市場に出回るようになったパソコンなど高価な商品やタバコなどの密輸品への課税で多大な金額を稼いでいると、市民らは不満を口にする。


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