教員の本来の職務からは大きく外れた運用であったが、保護者からはもちろん喜ばれた。当時、五十嵐立青市長は報道陣に対し、「つくば市は医療従事者など仕事を休めない保護者も多い。どうすれば市民生活への影響を最小限に抑えられるかと考えた」と述べた。裏を返せば、社会が止まったとき、福祉の側だけでは子どもを受け止めきれなかったということである。
日本では、義務教育を国が保障する学校教育制度に比して、子ども達の福祉制度構築がまだ模索段階にあるためか、学校がその任を補ってきた面がある。学校が担う役割は広がり続けてきたが、その広がりに見合う人と予算が付かず、その差を、給特法のもとで学校が吸収してきたのではないか。コロナ禍におけるつくば市の対応は、それが可視化された顕著な例である。
だが、福祉の穴を学校(教員)の献身で埋めてきた構造は、もはや持続可能ではない。だからこそ制度として「子どもの居場所の権利」を整理・保障する必要がある。
教育か福祉か――海外の状況
他国ではどうか。子どもの預け先は「福祉」か「教育」かという問いは、各国でも答えが分かれている。
例えばスウェーデンでは、学童にあたる「フリーティズヘム(fritidshem)」がある。これは福祉ではなく、教育法に位置づけられた学校教育の一部とされる。学校が閉まっている時間帯や長期休暇中に、就労・就学中の親の子どもや、支援が必要な子どもを受け入れる教育的な集団施設であり、欧州委員会の教育情報サイト「Eurydice」によれば、就労・就学中の親の子どもには、公費で補助された席を得る権利がある。
ドイツでは、21年に、小学生が放課後も学校などで過ごせる権利を段階的に保障する法律「全日支援法(Ganztagsförderungsgesetz、略称GaFöG)」が成立した。これは児童・青少年福祉の法律に位置づけられるもので、連邦政府の説明によれば、26年8月にまず1年生を対象に施行され、毎年1学年ずつ対象を広げて、29年8月に始まる学年からは、日本の小学校1年生から4年生にあたる子ども達が、放課後の預かりを含む全日制の教育・保育を受ける権利を持つことになる。
形は違っても、どちらも放課後の子どもの居場所を、権利として法律に書き込んでいる。日本の学童保育も児童福祉法に定められてはいるが、市町村には利用の促進に努める義務(努力義務)が課されているにとどまり、利用が権利として保障されているわけではない。
