ただし、19年5月にも、フーシ派が同パイプラインをドローン攻撃し、操業を一時停止に追い込んでいる。こうした経緯を踏まえれば、フーシ派が今後、サウジアラビアへの圧力を強める手段として、同パイプラインを再び攻撃する可能性も否定できない。
さらに9月10日には、フーシ派が紅海沿岸の港湾都市モカを制圧し、バブ・エル・マンデブ海峡への接近を強めた。翌11日には周辺地域や戦略的に重要な島嶼部にも支配を広げ、紅海南部の海上交通に対する圧力が一段と高まった。サウジが原油をヤンブーまで輸送できても、その先の海上輸送が制約されることなった。
この結果、サウジは、東のホルムズ海峡、西の紅海およびバブ・エル・マンデブ海峡、そして国内の東西パイプラインという主要な輸送経路すべてに安全保障上のリスクを抱える状況となった。
オマーン沖でのSTSによる原油輸出
東西パイプラインの停止を受け、サウジは原油輸出を維持するため、再びペルシャ湾岸からの出荷を拡大している。その際に重要な役割を果たしているのが、オマーンのソハール沖で行うSTS積み替えである。
アラムコは、ペルシャ湾岸のラアス・タヌーラやジュアイマで原油を積載したタンカーを、AIS(自動船舶識別装置)を停止した状態でホルムズ海峡の外まで航行させ、オマーンのソハール沖でアジアの買い手側のタンカーに原油を積み替える方式を拡大した。これにより、ホルムズ海峡内の航行リスクを買い手側に全面的に負わせることなく、中国、韓国、日本などへの供給を維持することが可能となる。つまり、サウジ側のタンカーが危険度の高い海峡通過を担い、海峡外のオマーン湾で買い手側のタンカーに原油を引き渡す仕組みである。
ロイター通信の報道によれば、東西パイプラインへの攻撃後、アラムコは9~10月積みとして、ソハール沖でのSTS向けに約6000万バレルの原油を販売した。これに伴い、ホルムズ海峡を経由するサウジ産原油の輸出量は、8月の約90万b/dから9月には約360万b/dへ増加した。さらに、サウジの原油輸出全体も8月の約245万b/dから9月には約540万b/dへ回復しており、オマーン沖でのSTSは紅海経由の出荷減少を補う重要な輸送手段となっている。
一方、STSを支えるシャトル輸送には安全保障上のリスクもある。イランがホルムズ海峡への管理を強めようとする中、同国の同意を得ずに海峡を通過する船舶は攻撃や拿捕の危険にさらされる可能性がある。ホルムズ海峡を通過した後にオマーン沖で原油を積み替える方式は、輸出を維持する上で有効ではあるものの、その前提となる海峡通航自体に大きなリスクを抱えている。

