この構想には、仏トタルエナジーズが関与する可能性もある。中東経済専門誌「AGBI」によると、同社のパトリック・プヤンヌCEOは9月28日の投資家向け説明会で、サウジ側がドゥクム向けパイプラインの建設に向けて「作業を開始している」と述べた。現時点でトタルエナジーズによる投資や参画は正式に発表されていないが、同社は湾岸地域のパイプライン事業への投資意欲を示しており、将来的に資金面や技術面で関与する可能性がある。
一方、実現には課題もある。700万b/dの処理能力を持つアラムコのアブカイク石油処理施設からドゥクムまでは約1200kmにおよび、その大部分がルブ・アル・ハーリー砂漠を横断する。このため、パイプラインの建設には多額の費用と長い工期を要するとみられる。
このため有力なルートとしては、21年に開通したサウジとオマーンを結ぶ「エンプティ・クォーター・ロード(Empty Quarter Road)」沿いが想定されている。同道路は100万b/dの生産能力を持つサウジのシャイバ油田付近を通っており、砂漠地帯でのパイプライン敷設に必要な機材や資材を輸送しやすいという利点がある。
もう1つの課題は、国境を越えるパイプラインとなるため、オマーン側との商業条件や運営体制などについて調整が必要となる点である。このため、現時点では構想の実現可能性を慎重に見極めている段階とみられる。
日本にとっても意味
一方、構想が具体化すれば、サウジにとって「第三の輸出軸」となり、ホルムズ海峡や紅海で輸送障害が発生した際の代替輸送能力を高めることができる。とりわけ、日本を含むアジアのサウジ産原油輸入国にとっても、供給ルートの多様化につながるため、エネルギー安全保障上の意義は大きい。
日本の原油輸入に占めるサウジ産原油の比重は大きい。26年1~2月には、サウジ産原油が日本の原油輸入全体の約54.6%を占め、国別で第1位だった(出所:財務省貿易統計)。イラン戦争下の3~7月にその比率は約33.7%に低下したものの、アラブ首長国連邦(UAE)に次ぐ第2位を維持した。こうした高い依存度を踏まえると、サウジ・オマーン間の原油パイプラインは、日本の原油調達の安定性を高める上でも重要な意味を持つ。
