2026年10月14日(水)

商いのレッスン

2026年10月14日

◆今日のお悩み
同業他社の価格や動向を見ながら経営判断をしています。業界団体でも情報交換しますし、他社と大きく違うことをすれば取引先から浮いてしまう不安もあります。一方、横並びばかりでは自社らしい経営はできません。競合を参考にすることと、業界の慣行に流されることを、どう区別すればよいのでしょうか。

 値上げが相次ぐ秋、消費者に身近なビールをめぐる調査が企業経営の根本を問いかけている。2026年10月7日、公正取引委員会は、酒類等の販売価格をめぐり、製造販売業者4社が価格カルテルを行っていた疑いについて、犯則調査を行っていることを認めた。

 犯則調査は裁判官の許可状に基づいて行われるが、現時点で独占禁止法違反が認定されたわけではない。公取委も「調査をスタートしたところ」とし、まず事実関係を解明する段階だと説明している。だから、ここで4社の違法性を論じるのは早い。

 むしろ、この出来事から私たち自身の経営に問いを返したい。「他社もやっている」は、経営判断なのだろうか。

 もちろん、この言葉を4社が口にしたという意味ではない。業界を問わず、経営の現場でしばしば聞かれる言葉だからである。

 「競合も値上げした」「同業他社もこの条件だ」「業界ではこれが普通だ」という主張は一見もっともらしい。しかし、その瞬間、判断の主語が「自社」から「他社」へ移ってはいないだろうか。

 公取委は9月2日、物価高の局面での価格設定について、値上げ自体を問題視しているわけではないとした上で、価格は重要な競争手段であり、自らのコストや事業戦略を踏まえ、各社が独立して決める必要があると改めて注意喚起した。

 つまり、問題は「値上げしたか」ではない。「誰が、何を根拠に決めたか」なのである。

横並びは「安心」から始まる

 経営者が同業他社を見るのは当然である。価格、商品、出店、採用、賃金、サービスなど、競合を知らずに経営はできない。問題は、「見ること」と「合わせること」を混同するときに起こる。

 たとえば値上げを考えたとする。原材料費も物流費も人件費も上がっている。それでも自社だけ先に値上げすれば、顧客が競合へ流れるかもしれない。逆に、競合も値上げするとわかれば決断しやすい。

 そこで「あの会社はどうするのか」を知りたくなる。そこにあるのは、悪意というより「一社だけ違う決断をして失敗したくない」という不安だ。

 業界団体や同業者の交流には、安全、環境、技術標準、人材育成、政策提言など重要な役割がある。競合企業が協力した方が社会にとってよい領域も多い。問題は、本来自社で決めるべき価格や数量、将来の戦略まで、周囲の動きを確かめなければ決められなくなることである。


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