2026年11月5日(木)

教養としての中東情勢

2026年11月5日

 イスラエル総選挙はネタニヤフ首相率いる与党リクード連合もアイゼンコット元参謀総長の中道ヤシャル中心の野党勢力も過半数を取れなかった。今後は連立工作が活発化するが、ジグゾーパズルのような複雑な組み合わせの中、生き残りの名人ネタニヤフ氏が米国のトランプ大統領をまねて「不正選挙」を主張、選挙結果の確定を引き伸ばして再選挙を狙う。混迷深める展開を追った。

総選挙で過半数を取れなかったネタニヤフ首相はどう動くのか?( ロイター/アフロ )

国民の不安煽る作戦で逆転

 一院制120議席を比例代表制で争った。事前の予想通り、与野党とも過半数の61議席を取れなかった。

 与党のリクード連合は選挙前の68議席から53議席に激減したが、野党側も48議席と振るわなかった。“2級市民”と称されるアラブ系の2党が計19議席を獲得、キャスティングボードを握った。

 1カ月半ほど前の世論調査では、首相の右派リクードが21議席、ヤシャルが25議席など親ネタニヤフ派の劣勢が伝えられた。しかし、首相は選挙戦の終盤で逆転、第1党を確保した。首相が苦戦していたのは本人が汚職の刑事被告人であること、3年前のイスラム組織ハマスの奇襲を防げず、責任を追及されているからだ。

 土壇場で踏ん張った首相が“事実上の勝者”といわれる所以だ。なぜ盛り返したのか。大きくいって理由は3つある。

 1つは選挙戦で宿敵イランの脅威を叫び、国民の不安を煽り続けたことだ。首相は「イランは実存的脅威だ」と強調、自分がいなければイスラエルはイランの核爆弾で消滅する危機にあったと訴えた。ユダヤ人は迫害の歴史を持っており、とりわけナチスドイツに虐殺された被害者意識を巧みに刺激した。

 2つ目はアラブ系市民が投票所に殺到している、として有権者の危機感をついたことだ。「(リクードなどの)右派か、パレスチナか」と有権者に迫り、アラブ系市民との対立を煽った。

 アラブ系市民はイスラエルの2割程度だが、首相が新たな差別社会を作ったと批判されている。首相の言動でリクードも票を伸ばしたが、アラブ系は10議席から19議席に倍増した。


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