2026年11月5日(木)

教養としての中東情勢

2026年11月5日

 3つ目は首相がトランプ大統領からの支持を利用したことだ。トランプ氏は首相を「偉大な戦士」と呼び、続投を後押し。その後もSNSで完全な指示を打ち出していた。米大統領との親密な関係が事実上の勝利に寄与したのは間違いない。

「選挙が盗まれた」とトランプまねる

 しかし事実上勝利したと言ってもリクード連合の53議席では過半数には到底及ばない。そこで首相は「選挙が盗まれた」として、2020年にトランプ大統領がバイデン前大統領に敗れた際に使った手口を持ち出した。選挙結果を認めないことで、再選挙に持ち込むハラだとされる。

 ことの発端はリクード側が、アラブ系政党がカタールから資金提供を受けていたと攻撃したことだ。選挙の無効を求める議論に発展しており、ネタニヤフ首相は外国からの干渉があった不正選挙との批判を繰り返している。証拠は見つかっておらず、カタールは「関与していない」と否定している。

 国内治安機関シャバクが疑惑のアラブ人政治家4人を聴取する方針だが、検事総長は「証拠を固めてからでなければ、民主主義ではない」と批判している。当のアラブ政党「ジョイント・リスト」は声明で「首相が権力にしがみつき、アラブ人を非合法化しようとしている」と非難した。リクードは検事総長が捜査を妨害しようとしていると反発している。

複雑怪奇なシナリオ

 問題は誰が今後政権を担うかだ。イスラエルでは大統領が各政党の党首を呼んで事情を聴き、連立政権発足に最も可能性のある政党に組閣を要請する。

 現地メディアによると、ネタニヤフ首相とアイゼンコット元参謀総長がまずはその候補だが、アイゼンコット氏が先に要請されるのではないかとみられている。与党勢力が53議席なのに対し、野党側は67議席を獲得したからだ。

アイゼンコット元参謀総長が連立工作へ動く見通した(同氏公式Xより)

 しかし、連立工作の先行きは各政党の公約や思惑もあり、極めて複雑だ。第1のシナリオはアイゼンコット氏が48議席の少数連立政権を樹立し、19議席保有のアラブ政党と閣外協力の合意を結ぶ形である。

 だが、アラブ系政党はパレスチナ独立国家やハマスのテロリスト指定をめぐってユダヤ人政党の主張と溝がある。アラブ系政党を閣内に入れると、その正統性を問われかねない。

 アイゼンコット氏はアラブ系政党との協力の形も排除してはいないが、反ネタニヤフで一致する同盟の中道右派「ヤハド」や極右の「わが家イスラエル」などはアラブ系政党との連携を公約で拒んでおり、この調整は困難だ。ただし、このシナリオはネタニヤフ首相が最も恐れる展開だ。

 第2のシナリオはアイゼンコット氏が現在内閣に参加している宗教2政党を取り込んで過半数をぎりぎり確保する形だ。宗教2政党の議席は合わせて13。宗教2政党もネタニヤフ政権では要求が通らず、政権を離れたい考えという。

 しかし、難問がある。宗教2政党はユダヤ教超正統派に属する若者の徴兵免除を求めており、アイゼンコット氏には受け入れ難い。


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