2026年11月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年11月4日

 ウォールストリート・ジャーナル紙が10月13日付け社説にて、グリンケウィッチ欧州連合軍最高司令官が明らかにした北大西洋条約機構(NATO)の新戦略「勝利の理論(Theory of Victory)」は、「我々は戦う」というプーチン氏へのメッセージであり、同時にトランプ政権の対欧州政策に対抗する役割を果たしている、と指摘している。要旨は次の通り。

ポーランドのワルシャワで2026年10月12日に開催された「ワルシャワ・セキュリティ・フォーラム」で、NATO欧州連合軍最高司令官のアレクサス・グリンケヴィッチ氏が演説した(ロイター/アフロ)

 10月12日にワルシャワで開かれた会議において、グリンケウィッチ欧州連合軍最高司令官は、プーチン氏がNATO加盟国を攻撃した場合の「勝利の理論」を明らかにした。同司令官は、NATOには平和を守る以外の野心はないとして、大西洋同盟がプーチンを脅しているという虚偽の主張に反論した。

 同司令官は「我々の防衛的な性質を、弱さや決意の欠如と取り違えてはならない。もし誰かが愚かにも我々を攻撃するようなことがあれば、我々は戦う」と付け加えた。「誰か」とは、クレムリンを指す。

 ドローンの侵入やサイバー攻撃を伴う今日のロシアのハイブリッド戦術は、プーチンがリスクを冒す覚悟さえあれば、より激しい戦争へと発展しかねないということを、NATOはようやく認識し始めた。ウクライナで問題を抱えていても、NATOを「張り子の虎」と知らしめる好機があると見れば、このロシアの独裁者は賭けに出る可能性がある。

 グリンケウィッチ司令官は、侵攻部隊を撃退するための「阻止(block)、打撃(blunt)、粉砕(break)」という戦略を提示した。同盟が誇る優れたデータ収集・探知能力があれば、プーチン氏は西側諸国の不意を突くようなことはできないだろう。

 この戦略は、ウクライナにおけるドローンやミサイル戦の教訓を踏まえたもので、ウクライナが形式上はNATOの一員でなくとも、実質的には最前線の同盟国となっていることを改めて認識させるものだ。

 この演説は、欧州の問題は欧州自身に任せようというワシントンからのシグナルに対抗する役割を果たしている。プーチンがもし攻勢を強め、予備戦力を投入するようなことがあれば、NATOはそれを「支援、維持、あるいは指揮するあらゆるもの」を攻撃するだろうという司令官の発言に、プーチンは間違いなく注目しただろう。


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