“食品添加物は危険”というイメージを植え付ける人々
「部分的な危険性だけに注意を払いすぎると、とんでもないことになる」
人は、リスクがあるものに対しては、“リスクがある”ということばかりに心を奪われがちになる。“リスクの要素がどのくらいあるか”や“ベネフィットはどのくらいか”といった量の概念は薄れてしまいがちだ。
こうした人びとの心理を巧みに利用するかのように、“食品添加物は危険”と吹聴して、講演や著書を連発する評論家やジャーナリストもいる。長村教授が問題視するのは、彼らの“嘘は言っていない”範囲で、“食品添加物は危険”というイメージを人びとに喚起させるやり方だ。
「『ビタミンC』と書けば体によい印象をあたえますが、彼らは同じ物質を『アスコルビン酸』と表現し、怖そうな化学工業的なイメージを出します。また、豚骨スープはこういう食品添加物でできていると言って、入っている豚骨エキスの粉末を示すのですが、スープも粉末になれば法的には食品添加物になります。そしてなんの嘘も言っていませんと言う。これは確信犯といってよい」
食品添加物の危険性についても、本を見ると、<毒性の強いものを食品に混ぜていることが許されていること自体、疑問に感じざるをえません>といった“感情に訴える表現”や、<毎日のように発がん性物質を摂取、体内に蓄積を続けている可能性が高いだろうと考えられなくもありません>といった“否定はしない表現”が駆使されている。
「この手の本の問題は、やはり量の概念がないこと。発がん物質が入っているかどうかということだけであれば、ほとんどの食品には発がん物質は入っていることになります。その食品に発がん性が認められないことの保証された食品添加物が極めて安全な量だけ添加されていて、それにより利益が生じるということを考えたら、無添加にすることはまったく意味のないことです」
長村教授は、「彼らのやっていることは犯罪行為だと思っています」と言い切る。