2024年4月20日(土)

対談

2014年10月3日

飯田:同じことで、わざわざ行くだけの理由がない街は、やはり厳しいです。たとえば松花堂弁当で勝負をしたら、きっと一流料亭が勝ってしまうでしょう。でもトルコライスみたいな地域限定グルメだったり、どこにでもあるものであってもカニクリームコロッケ一品で勝負するのであれば、地方の無名の洋食屋が勝つこともありうるはずです。なぜみんなで揃って真っ向勝負を挑もうとするのか。

木下:どこにでもあるものばかり作るんですよね。それが失敗しても言い訳できるから。皆がやっていることをやって失敗してもいいという逃げの姿勢です。

飯田:焼きそばとか(笑)。

木下:焼きそばは救いがないですよね。ご当地バーガーもそうですよね。地元の食材をとりあえず挟んじゃおう、みたいな。しかも便乗しているだけで、まずいものが多い。

飯田:アメリカで100年以上も培われてきて、世界食になったものなんて数少ないわけで、あの組み合わせ以上のものはそうそうないんですよね。そこに何かを挟むほど味が落ちていく。

木下:大根が名産だからと、ソテーした大根を挟んだり。「美味しいでしょう?」と聞かれても感想に困る(笑)。みんなで戦い方を間違えているんですよね。

飯田:ゆるキャラもそうですよね。

木下:ほかの地域がこぞってやっていると、同じことをしたくなるんですよね。みんながやっていないことをやらなきゃいけないのに。地方が互いに参入して潰し合いをし、予算を浪費して不幸になる連鎖の象徴に思えます。

飯田:東北地方であれば「仙台がやった」の影響力はかなり大きいですよね。たとえば仙台市が東日本大震災からの復興支援としてなにかをすると、ほかの自治体も「うちもやらなきゃいけないのかな」となる。「よそがやっているから、うちはやらない」でなければいけないのに。

木下:隣近所にあるものを自分の街に作り合っているのが現実です。役所の人には「競争」という概念がないんですよね。自分たちの行政区にあるかどうかしか見ていない。住民の行動範囲のなかにその施設がいくつあるのか、といったことは調べないんですよ。

飯田:それはすごい(笑)。

木下:最近関わっているプロジェクトで、岩手県紫波町という町の事例ですが、民間資金だけで体育館を作ったんです。その時に、マネージャーが周辺に多目的体育館がどれくらいあるのか、学校体育館も含めて調べてみたんです。半径30km内で見ると300を超えてしまいました。誰が見ても「多目的体育館にするという選択はないな」という話になるわけです。だから紫波町の民間が借金をして、宿泊施設付きバレーボール専用練習体育館を作ることになった。全国で見ても競合が少ないからこそ行う。一方で、全国ではいまだに税金を投入してどこにでもある多目的体育館が作られ続けている。普通、そんな血で血を洗うようなところには参入しないですよね。


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