「香港の高度な自治な中央政府が付与した権利」?
香港は1997年に英国の植民地から中国に返還されて、その主権が中国に移されたが、中国側はその時に「50年間は現在の政治制度を変えない」と誓った。そのため香港は中国の一部だが、特別行政区として「香港基本法」が制定されて、それに基づいて高度な自治が保障されてきた。しかし、王助教授によれば、武力行使が制約に触れることなく、「状況に変化が生じた場合、武警が香港特別区で安全保障任務に担う必要がある場合にはいかなる法的障害はない」と言い切る。香港特別区は「基本法」に依拠して高度な自治を享受していることになっているが、これは中央政府が付与した権利であるというのだ。高度な自治といっても中央と香港の関係において中央政府は主導権を持っており、さもなければ主権を回復し、統治権を行使できるようになった(1997年)のは絵空事に過ぎない。
更に「基本法」は香港行政区政府がコントロールできないような国家の統一や安全に危機を及ぼすような動乱が発生した際には全国人民代表大会の常務委員会は香港特別行政区が緊急事態に陥ったと判断し、中央政府の命令を通知して中国の法規を香港特別行政区に適用できるという。こうしたロジックに基づけば武警は中央政府の命令に依拠して「武装警察法」を香港にも適応させて騒乱を平定して社会秩序を回復させ安全、警備任務を実施することは合理的かつ合法的ということになる。
王助教授は武警の香港デモに対する出動への合法性を主張するもので同時に決意を示すものとして注目を浴びた。しかし、このような主張を学生が聞いたら憤慨するだろう。香港の高度な自治は北京政府が付与したものという主張は受け入れ難いだろうからだ。
党への忠誠と任務への決意
解放軍の考え方が窺えるもう一つの記事は、解放軍の機関紙『解放軍報』が1面に載せた「“香江衛士”の確固たる矢のような信念、志の強軍によって国に報いる」という論評だ。「香港駐屯の部隊(8000人余りと言われる)は愛国の強い信念を持ち、信頼に足る政治思想を育成する教育に日々鍛錬を積んでいる」と部隊を褒め称え、軍の党への忠誠と任務への決意を示している。
この記事によれば、10月1日の中国の国慶節を前に香港駐屯部隊の深圳基地の教育隊では今年入隊した1000人にも上る新兵を迎え、初めの授業「普遍の軍魂、永遠の信念」という講義を行った。これは新しい「強軍を鋳造するための軍魂」シリーズの講義の幕開けとなるものだという。