武警は、行政上は、警察組織である国家公安部に属するが、中央軍事委員会の直接指揮を受ける(中国語では「指導を受ける」とされる)。また、警察という名称でありながら、その制服は人民解放軍の軍服と同一であり、階級も軍の階級が使用されている。
外見だけでも、武警が単なる警察組織でないことが理解できる。米国の州兵や他国の対テロ警察部隊と同等とされることもあるが、組織的には武警はあくまで中国国家警察である。
また、武警の中には特殊警察部隊(通称「特警」、戦闘服は黒色だが「雪豹突撃隊」とも呼ばれる)が一部分として存在することから、武警は単なる対テロ警察部隊でもない。
優しい、お茶目… 意外な一面も
武警を一言で説明するのは難しい。紆余曲折を経て現在の形になっており、これまで種々の任務にあたってきた。しかし、少なくとも六四天安門事件以降、武警の主たる任務は国内の治安維持である。ここには、テロ対策も含まれている。
また、中央軍事委員会の直接指揮を受けることは、単なる国家警察とは異なる性格をも示すものだ。中国には、党中央軍事委員会と国家中央軍事委員会の二つの「中央軍委」があるが、二枚の看板があっても中身は一つである。中央軍委の指導を受けるということは、中国共産党指導部が直卒するという意味でもあるのだ。
武警は、外国人が北京で見る中国の顔でもある。天安門前に直立不動で立つ武警の姿は、観光客が最も目にしやすいものだろう。各国大使館のゲートの前でも、武警の隊員が立哨にあたっている。
北京で警備に立つ武警の隊員は、年齢、身長等の容姿に厳しい基準がある。若々しく凛々しい立ち姿が必要とされるのだ。大使館の警備に立つ武警の隊員は優しい一面を見せることもある。
以前の日本大使館のそばには柿の木があった。日本人の女性が柿を取ろうとした時、傍にいた武警の隊員が、彼女の手が届かない柿をもいで渡すといった光景も見られた。
また、お茶目な一面も見せる。大使館のゲート前で立哨に当たる武警の隊員たちは、交代時に隊列を組んで行進する。その隊列にいた隊員が高級外車のボディーをこづいてわざと警報音を鳴らしていた。隊列を率いている指揮官から叱られるのだが、舌を出して笑ったりする。