チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月10日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 習近平主席は2014年9月30日、国慶節のレセプションで行った演説の中で、香港について、「中央政府は、一国二制度方針と基本法を、断固貫く」と述べ、「長期的な繁栄と安定を維持していくことに変わりない」ことを強調した。

 穏便に事態を収束させたい中国指導部の、香港の学生たちに対する呼びかけである。米国メディアは、香港政府関係者の話として、中国政府は緊張をさらにエスカレートさせることには依然消極的だと報じている。同関係者は「行き過ぎた実力行使はするなというのが北京の意向だ」と語ったという。

 一方で、中国指導部は、香港で起こっているような民主化要求が大陸に影響を及ぼすような事態は、絶対に許容しない。

 学生たちも、一部封鎖を解除したものの、「選挙制度改革で実際の成果を得られるまで」全面撤退を拒否し、デモ拡大を宣言してさえいる。デモの行方は未だ不透明なままだ。

制服は人民解放軍の軍服と同じ

 中国指導部が、対話によってデモを収束させることができないと判断したら、実力行使に出ることはあり得る。この時に使用される最初の組織は警察だ。警察での対応が難しいと判断された場合は別の組織が投入される。しかし、それは軍隊ではない。

 ここで投入されるのは、武装警察、いわゆる武警だ。武警は、六四天安門事件以降、その勢力を拡大している。中国指導部が武警の重要性を認識しているからに他ならない。

スナイパーの訓練をする中国江蘇省の武装警察。見た目は軍のよう
(写真:Featurechina/アフロ)

 武警の人数は、正確には把握されていない。各軍種の人数を公表した2013年版国防白書でも、武警と第二砲兵(戦略ミサイル軍)の人数は公表されなかった。それほどセンシティブな任務を遂行する部隊であるとも言える。しかし、拡大傾向にあることは確かで、すでに150万人を超えているとも言われる。

 武警は、正式名称を中国人民武装警察部隊と言い、主として国内の治安維持を目的とした組織である。中国では、一般に武警と呼ばれるが、武警が使用する車両のナンバープレートの最初にある赤字の「WJ」は武警(WuJing)の頭文字をとったものだ。

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