チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月10日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中央と地方で異なる顔を見せる

 しかし、武警は全く違った表情も見せる。特に、地方に行けば、武警は外国人に見られることを意識することもない。

 中国では、年間10万件以上の暴動等が起こっている。2004年当時でも、国家統計局の職員が「年間7万件以上の暴動が起こっている」と話したことがあるが、実際にはそれ以上に多いことを匂わせていたのだ。

 こうした暴動に、武警は公安(警察)と一緒に対応することも多い。暴動鎮圧の際に見せる武警の顔は、北京で見せる顔とは全く異なる。

 六四天安門事件以降、武警は、非殺傷武器を中心に装備してきたが、威力の大きい武器も保有している。何より、鎮圧対象の人民のほとんどは武器を保有していない。

 武警内には、任務に応じた複数の機関があるが、北京の主要施設の警護も治安維持も内衛局の担当である。この内衛局は、その人員が総数の半分以上を占めると言われる武警の主力だ。

 機関ごとにも性格は異なるが、中央と地方でも全く異なった顔を見せる。また、地方の指導者は、自らの権力を維持する拠り所として、地方の武警をてなずけようとする。

表に裏に警備を行う武警

 香港でのデモは、中国指導部に良いところを見せたい行政長官にとっては失態だろう。黒社会(マフィア)の構成員を動員して学生たちに暴行を加えさせたという報道もある。

 香港の学生たちは、暴力を振るったりしていない。非難されるのは暴力を振るう側だ。行政長官が暴力に訴えれば、世界中の非難を中国に向けることになる。

 ましてや、武警を出動させれば、その映像だけで、中国国内外に六四天安門事件の悪夢を想起させる。しかし、すでに私服の武警の部隊が香港に入っている可能性もある。

 武警は、表に裏に警備を行う。北京でも、天安門広場で不自然なカップルを見かけたら、それは私服で警備にあたる武警の隊員だと言われる。

 いずれにしても、無抵抗な学生が弾圧されるような映像は二度と見たくない。

[特集]香港学生デモ
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