2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月19日

 10月9日付のカーネギー財団モスクワ・センターのサイトで、同財団のアレクセイ・アルバートフ研究員が、大国となった中国を、今後、核兵器削減交渉に関与させることの重要性を説いています。

 すなわち、ウクライナ問題で、ロシアと西側との関係はかつてないほど悪くなったが、それによって優位に立った国もある。とりわけ、中国がそうである。中国は、大規模なエネルギー契約に加え、ロシアと防衛協力を拡大した。例えば、ロシアの最新型S-400 地対空ミサイルの購入が協議されるなど、中露防衛技術協力が行われたり、軍事作戦上も、海軍合同演習が実施されたりした。

 長期的には、米露の政治対立は外交的に解決し、核軍備交渉が再開されるだろう。その際は、中国を関与させるべきである。それは、二国間の核軍縮を多国間のプロセスに変えて行こうというロシアの政策とも一致する。

 中国の出方は分からない。米国やその同盟諸国への対抗意識から、ロシアとの緊密な関係維持を望み、ロシアの天然資源や先端軍事技術、原子力技術を利用したいと思っているかもしれないが、中国は、ロシアの利益を守ろうとはしないし、ロシアと西側の対立にも巻き込まれたくない。中国は、かつてのロシア(旧ソ連)に代わって、核兵器交渉を含む世界の安全保障を管理する、米国の主要なパートナーになることを狙っているようだ。これは、中国が建国100周年の2049年までに世界屈指の大国になるという目標とも合致する。

 中国が慎重に進めているミサイル及び核の近代化計画は、第一義的には、中国の世界的地位を高めることが目的のように見えるが、実際には、米国、インド及び暗にロシアの力を阻止することにある。

 中国の特殊な戦略文化から来るのか、中国は、ロシアや西側とは異なった方法を取ることがある。例えば、戦略ミサイル、中距離ミサイル及び戦術弾道ミサイルを増強したり質の向上を図ったりしながら、中国は、それらミサイル及び核弾頭の一部を地下のトンネルに貯蔵しているらしい。約70年続く核兵器競争の歴史でも、これは珍しいやり方である。

 中国には、その核軍備に関する公式なデータがないことから、外国の試算も様々である。西側の大多数は、約250弾頭という数字を挙げるが、ロシアの権威ある試算では、1100以上という数字もある。この違いは、中距離核及び航空機運搬用核兵器の数が多い事から来る。ロシアの試算では、重力落下核爆弾が570、空中発射型巡航ミサイル搭載が400、更に、204の地上発射型戦術弾道ミサイル及び54の地上発射型長距離巡航ミサイルに搭載した核弾頭がある。


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