その後、中国は、おそらくIRBM及びSRBMを撤去し、代わりにICBMを導入するだろう。これは、米国にとって受け入れ難いシナリオであるが、いずれにしても、中国は、そうするだろう。ただ、合意がなければ、中国は、ICBM、IRBM、SRBMの全てを増やすだろうが、合意があれば、ICBMでの代替で済む。そして、米国は、少なくとも中国の地上発射型のミサイルに関する透明性及び制限を確保することが出来る。その間、米国は、圧倒的優位にある、海上及び空中発射型ミサイルを保持することができる。
中国は、自国の核軍備の規模は小さく米露とは比較にならない、と言っている。しかし、中国が、今や、米露に次いで、第三の核兵器国であることには変わりない。そして、中国の核軍備が完全な秘密に包まれていることは、おそらく、その小規模や脆弱性ではなく、過剰な数の核兵器を隠していることの表れだろう。従って、米露両国は、戦略兵器の近代化や核削減交渉にあたっては、「中国要因」を考慮しなければならない、と論じています。
*出典:Alexei Arbatov ‘Engaging China in Nuclear Arms Control’(Carnegie Moscow Center, October 9, 2014)
URL:http://carnegie.ru/2014/10/09/engaging-china-in-nuclear-arms-control/hrem
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筆者のアレクセイ・アルバートフは、現在、カーネギー・モスクワ・センターに所属していますが、元ロシア連邦議会の下院(State Duma)の議員で、ロシア統一民主党(Yabloko)の副党首、下院防衛委員会の副委員長も務めたことのある人物です。
また、アルバートフ氏は、冷戦華やかなりし頃のソ連きってのオピニオン・リーダーであったアルバートフ米加研究所長の息子です。謙虚な中に、現在のロシアでおそらく最も鋭い分析力と戦略眼を有する人物で、ゆくゆくは最有力シンクタンクのIMEMO所長になるかもしれません。現在は、同研究所の国際安全保障センター長を兼ねています。
上記は、核大国のロシアが、核及び通常兵器の軍備拡大を行なっている中国を警戒して書かれた興味深い論説であす。中国が保有する核弾頭の数が、西側の試算(250)よりも、ロシアの試算(1100以上)の方がずっと多いというのも、ロシアが中国に抱く警戒心の表れでしょう。
ただ、アルバートフ氏が、ウクライナで米ロ関係が極度に悪化し、核軍縮交渉どころではない今、なぜこのような長大な考察を発表したのか解せないところがあります。もっとも彼は、論壇の大勢を斜めに見て、本当に重要なこと、ものごとの本質に迫ろうとする癖を持っているので、今回もそうなのかもしれませんし、あるいはカーネギー財団に何か発表してくれと言われて、以前書いたものの英訳を提供しただけのものかもしれません。