2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月2日

 5月24-30日号の英エコノミスト誌は、ロシアと中国が接近しているが、両国間には根本的な相違があり、西側はうろたえる必要はない、と論じています。

 すなわち、5月21日に訪中したプーチンが4000億ドルの大型ガス契約について中国と合意し、2018年から30年間、年間最大380億㎥のガスがロシア国営ガス会社ガスプロムから中国石油天然気集団に供給されることになった。

 このロシア史上最大のガス取引の地政学的意義は大きい。10年揉めた交渉が今になって妥結したのは偶然ではなく、合意のおかげで、ロシアは対欧州輸出への依存を減らし、ウクライナをめぐる西側の制裁の痛みを緩和できることになった。それに、中露には米国への対抗意識と、地域の大国として自らの存在を主張したい願望がある。40年前、ソ連と別れて米国と手をつなぐようニクソンとキッシンジャーが中国を説得したが、今日の中露協力はかつてのような両国の同盟復活につながるのだろうか。

 プーチンがそうした印象を与えたいと思っているのは確かで、訪中前、プーチンは中国を「頼りになる友」と持ち上げ、両国の協力関係は「ここ数世紀で最高レベル」にあると強調した。一方、習近平も主席となって最初の訪問先にロシアを選んでいる。

 通商関係も拡大しつつある。中国は今やロシアにとって最大の貿易相手国であり、今回のガス合意以前に、両国は貿易額を2013年の900億ドルから2020年までに倍増させることで同意していた。今後、西側の銀行がロシアへの融資を渋れば、中国が穴埋めをするだろう。他方、中国も今回の合意により、マラッカ海峡経由の資源輸送への不安や、大気汚染の原因である石炭への依存を減らせることになった。

 地政学の面でも両国は連携した。中国は、クリミアの住民投票を却下する国連安保理決議で投票を棄権し、アサド政権に対する制裁でもロシアと共に拒否権を行使し、イラン核問題でもロシアと歩調を合わせてきた。

 歴史的な大国意識と米国に対する被害者意識、さらに、自国周辺で思うままに振舞いたいという願望も共通している。その結果、ロシアはクリミア併合とウクライナ東部への介入により国際社会で孤立、中国の東シナ海や南シナ海での強引な行動も周囲に強い警戒心を引き起こしている。

 しかし、こうした類似性や利害の共有にも拘らず、中露間には克服し難い根本的相違がある。ガス協定の合意に10年かかったこと自体、交渉がいかに難しかったかを示し、今回は、訪中の成果を出さなければならないプーチンの足元を見た中国が交渉を押し切ったと言われている。


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