2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月11日

 ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、イグネイシャスが、5月9日付同紙で、プーチンには長期的戦略がなく、その場その場の行動をとっている、と論じています。

 すなわち、ウクライナに関して、プーチンはアグレッシブな行動をとっているが、計算高くもある。彼は成功を欲しているが、その為にどんなコストでも払おうとは思っていない。

 プーチンのこの複雑さは、東部ウクライナでの矛盾した動きによって明らかとなっている。プーチンは5月7日、東部ウクライナの分離独立派に対して、住民投票を延期するように求めた。さらに、5月25日に予定されているウクライナの大統領選挙に対しての支援を申し出た。

 プーチンは、オープンで率直、そして対等な対話が唯一のウクライナ危機の解決策であると述べており、態度を軟化させたように見える。しかし、モスクワは今でもその対話を妨害しようとしているという見方も存在している。

 プーチンの行動は、明確な戦略というよりも、場当り的な政策決定によるものである。プーチンは狡猾であり、ロシアが損害を被るような行動をとることには慎重な姿勢をとっている。プーチンは、注意深く嫌がらせをしているように見える。

 ロシアウォッチャーにとって、この数週間で、気まぐれなロシア大統領のイメージが明らかになった。例えば、

・プーチンはオバマを始めとする世界の指導者がソチ五輪に行かなかったこと
に個人的に傷ついた怒りっぽい指導者である。

・プーチンはお金――ロシアの財政と自分の私的な口座の双方――のことを心配している。プーチンは西側が更なる経済制裁を課すことが出来ると知っている。

・プーチンはドイツの動きを注視している。メルケル首相の訪米が、プーチンの計算に影響を与えた。つまり、メルケルとオバマが、ロシアがウクライナの大統領選挙を妨害した場合には更なる制裁を課すと同意したために、 プーチンは自らの行動を再考せざるを得なくなった。

 プーチンは、よく考えられた長期戦略を持たずにウクライナで行動している。クリミア編入のプロセスはプーチンの予想よりも早く進んだ。同様に、東部ウクライナも予想以上に早く解体が進みそうであり、西側の多くのアナリストが本当はプーチン自身も欲していないと考えている、ウクライナへの侵攻をせざるを得ないかもしれない。


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