2014年5月20日に上海で開かれた中露首脳会談と、同日から上海沖で開始された定例の中露合同海軍演習を通じて、例年通り、両国の政治的な蜜月ぶりが対外的に演出された。クリミア編入や海洋進出で国際社会から非難されるロシアと中国が、欧米に向けて結束を図っているかのように見えるが、その矛先は日本にも向けられているのだろうか。
中露首脳会談の唯一の進展は天然ガス
今回の中露首脳会談で唯一注目されるのが、ロシア産天然ガスの対中輸出に関する合意である。ロシアは、2018年から30年間にわたって年間380億立方メートルの天然ガスを中国に供給することで合意した。国営天然ガス会社のガスプロムにとって、ソ連時代を通じて史上最大級の契約にあたるという。
契約総額4000億ドル(約40兆円)を供給総量で割り算すれば、1000立方メートルあたりの単価が350ドルとなり、対EU輸出価格を下回るため、価格交渉でロシアが中国に大きく譲歩したとの指摘がある。しかし、実際には、供給量が徐々に増量される傾斜期間があることから、その単純な計算式は成り立たず、ロシア経済紙「ヴェドモスチ」は387ドルと報じた。ロシア側の狙いは、欧州からアジアに販路を拡大することだけではなく、欧州で下落傾向にあるガス取引価格を維持することであったと考えられる。
こうしたロシア側の政策意図は、ウクライナ危機以前からみられるものであり、10年越しの中露間のガス価格交渉の余地は、既に相当狭められていた。今回、首脳会談までに交渉がまとまらず、一度は決裂したと報じられながらも、プーチンが上海を離れる直前に最終妥結した。ロシアがこのタイミングで対中資源輸出を実行する必要があったという点では、クリミア編入後の国際社会におけるロシアの孤立が与えた影響は大きい。しかし、中露間の資源協力の動きそのものは、ウクライナ危機以前からの既定路線に過ぎない。