注目された武器輸出は今回も先送り
中露戦略的パートナーシップの実利的側面は資源と武器の輸出であるが、今回注目された武器輸出に関しては合意が先送りされた。ロシア国内では2013年後半から中露間の武器輸出交渉の進展が伝えられ、今回のプーチン訪中にも、軍需産業を統括するロゴージン副首相や武器輸出に携わるフォミン連邦軍事技術協力庁長官らが随行していた。それにもかかわらず、最新鋭スホイ35戦闘機24機とラーダ級潜水艦4隻の中国への売却は、2012年末に政府間の枠組み合意が達成されているものの、2013年3月の中露首脳会談に続き、今回も最終合意が見送られた。
近年、中露間の軍事技術協力が冷え込んでいる理由は、価格や性能などの細部条件をめぐって両者が対立していることに加えて、対中武器輸出そのものにロシア側が慎重な姿勢を強めているためである。それは、ロシア製武器をコピーするという知的財産権の問題だけではなく、軍事面におけるロシアの対中不信が増大しているためである。
2014年5月16日付のロシア紙『独立軍事評論』において、著名な軍事専門家のフラムチュヒンは、潜在主敵への最新兵器の売却は永久に止めるべきであり、ロシアにとって最大の脅威である中国を欧米に対する現実的なバランサーと考えるのは最も愚かな過ちであると断言している。
合同海軍演習における対日牽制に温度差
冷え込んだ軍事技術協力をカバーするためか、中露首脳会談に合わせて第3回中露合同海軍演習「海上連携2014」が実施され、両首脳が開会式典に参加した。中国側の強い意向により、開催場所として上海沖の東シナ海が選ばれ、航空機識別・防空訓練も行われたが、それ以外には過去2回の演習と比べて目を引く内容はみられない。
2005年には中国山東半島で陸海空の全ての兵力が参加する1万人規模の大規模な合同演習が実施され、当時は両国の軍事的連携ぶりを第三国にアピールするという「外向け」の演習であった。しかし、現在では相手の海軍能力を相互に把握する「内向け」の小規模な海軍演習に転じており、ロシアからすれば将来的な北極への海洋進出が見込まれる中国海軍の実力を、中国からすればロシアが先進する対潜水艦戦(AWS)能力を、毎年の海軍演習を通じて直接把握することが主目的となっている。
合同演習中に中国機が自衛隊機に急接近したように、中国側は対日牽制の一環として同演習を利用しているが、従前通り、国防省やメディアも含めてロシア側にはそのような姿勢はみられなかった。合同演習を通じた対日牽制ぶりに関しては、過去2回の演習と同様に、中露間に相当の温度差が確認された。