2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年6月6日

第二次大戦終結70周年行事は反日共闘か

 今回の首脳会談で、両首脳は、2015年に第二次大戦終結70周年記念行事を共催することで合意した。これは習近平国家主席が2014年2月の五輪開催時にソチでプーチン大統領と会談した際にロシアに呼びかけたものである。今回の「共同声明」では、「ドイツのファシズムと日本軍国主義に対する戦勝70周年祝賀行事」と表現されているが、ロシアは「対独」、中国は「抗日」と双方の力点はそれぞれ異なる。

 中露両国は、2010年にも65周年記念行事を実施しており、「歴史のねつ造に反対する」というフレーズは当時から繰り返されている。このころから、中露は歴史協調を全面に押し出すようになったが、ある意味、これ以外に両者を結び付ける接着要因が少なくなっていることを示している。中露首脳会談直後の5月24日、プーチン大統領が主要国の通信社と会見した際、ロシアにも中国にもそれぞれ独自の対日関係があり、中露双方が他国との二国間関係を発展させる際に互いに条件を課すことはないと発言し、中露関係の強化は日露関係には影響を与えないとの認識を示している。

 2010年の「共同声明」では、中国語の「核心的利益」に相当するロシア語として「根本的利益」(korennye interesy)という表現が用いられていたが、2012年の「共同声明」では「枢要な問題」(kliuchevye voprosy)という一般的な表現に置き換えられた。しかし、今回の「共同声明」では「根本的利益」(korennye interesy)という訳後が復活しており、この点ではロシアが中国に配慮したものと考えられる。それでも、双方が共通に認識する「核心的利益」の具体的内容は明らかではなく、今のところ、尖閣問題と北方領土問題で中露が互いの立場を支持する動きには発展していない。

ロシアの影響圏に進出する中国

 プーチン大統領によるクリミア編入は、ロシアの影響圏的発想が濃厚であり、そこに侵入しようとする外部勢力にロシアが強く反発したことを国際社会に印象付けた。その外部勢力とは、一義的には北大西洋条約機構(NATO)などの欧米勢力を指すが、ロシア軍関係者によるとそこには中国も含まれるという。中国は、中央アジアに続いて、クリミア半島を含むウクライナでも、インフラ投資や農地租借など積極的に進出していた。巨額の対外債務を抱え、デフォルトの危機に直面するウクライナも、経済支援先として、欧米やロシアとともに中国も天秤にかけていた。

 実は、今回の「共同声明」の中で注目されるのが、習近平主席が昨年9月にカザフスタンを訪問した際に打ち出した「シルクロード経済協力ベルト」に関する記述である。これは、中国から旧ソ連地域を通じて欧州に至る経済協力ベルトを創設して、中国主導の人口30億人の経済圏を作ろうという壮大な構想であり、これに基づき中国はロシアが影響圏と見なす中央アジアやウクライナへの進出を加速していた。同構想に関して「共同声明」では、「中国がロシアの利益を考慮したいと考えていることを大いに評価する」と記されており、ロシアの利害を尊重することなくロシアの影響圏に進出することに対して、ロシアが中国に釘を刺した表現と受け止められている。


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