2022年10月1日(土)

安保激変

2015年1月8日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

明海大学外国語学部教授

日本国際問題研究所主任研究員を兼任。専門は日本の外交・安全保障、日米同盟、インド太平洋の国際関係。主な共著に『アジアの国際関係―移行期の地域秩序』(春風社)など。
 

 ガイドラインの改定はより力強い日米同盟を築くための戦略的な構想を描くことを目指しているが、現在の安全保障環境では日本がより主体的な役割を果たすことが求められているため、ガイドラインの改定を早急に進めるよりは、安保法制基盤を固めた上で、日米の役割分担を見直す方が望ましい。

 現在の安全保障環境の特徴は、中印など新興国の台頭によって世界規模のパワーバランスに変化がみられる一方、大量破壊兵器やミサイル、サイバー攻撃能力など軍事技術の急速な発展と拡散、イスラム国に代表される国際テロ組織などにより、日本から離れた地域で発生した脅威が日本の安全保障により直接的な影響を及ぼしかねないことである。

複雑化する安全保障環境

 加えて、クリミアの併合や北朝鮮と韓国の黄海での小競り合い、南シナ海での領有権紛争などでみられるような平時でも有事でもないまま国家主権が侵害される、いわゆる「グレーゾーン」事態が生じやすくなっている。これは、中国の政府公船が尖閣諸島の周辺海域を徘徊し、中国の軍用機が日本の領空に接近する事案が続いている東シナ海で日本が直面している大きな課題でもある。

 安保法制に関わる閣議決定は、平時からグレーゾーン事態、日本に対する武力攻撃までへの切れ目のない対応を通じて日本自身の防衛力を高めながら、米国との集団防衛の実効性をより深めて武力紛争を未然に防止し、国連PKOなど国際平和協力活動への一層の参加によって国際環境の平和と安定に、より貢献することを目指している。具体的には、日本政府が閣議決定前に示した15事例に代表される事態への対処を法的に裏づけることになる。

安保法制の整備は今後の自衛隊の運用に関わってくる(JIJI)

 安保法制の整備の大きな課題は、グレーゾーン事態への自衛隊の関与である。グレーゾーン事態への対処に関して、日本政府は現行制度の運用を改善する方向で検討しており、自衛隊と警察や海上保安庁などの連携を強化しつつ、自衛隊の治安出動や海上警備行動をより迅速に下令できるようにすることが柱となっている。

 しかし、グレーゾーン事態に自衛隊が積極的に対処することは、米国を含めて他国からは過剰反応と受け止められる危険性があり、慎重な検討が必要である。また、中国にとっては軍が行う活動はすべて軍事活動であるため、自衛隊を海上警備行動などで出動させた場合、中国は日本が事態を拡大させたと国際社会に向けて宣伝するであろう。実際、2012年に中国の政府公船がフィリピン領であるスカボロー礁周辺に現れた時、フィリピンは軍艦でこれに対処しようとして国際社会の支持を十分に得ることができなかった。

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