2024年11月23日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年7月22日

 No one in Washington, D.C., had imagined that modern American soldiers would be riding horses to war. (p124)

 「ワシントンDC(政府)ではだれも、近代的なアメリカ軍の兵士が戦争で馬に乗ることになるとは考えてもいなかったのだ」

 これからタリバンを倒すために協力して一緒に戦わなければならないのに、馬にも乗れないことが分かると信頼を得られない。アメリカ兵たちは慣れない馬に乗るものの、大柄なアメリカ人に比べ馬が小さいため乗馬姿勢も窮屈で、腰を痛めたり、お尻がすりむけて血が出たりするなど、厳しい訓練を受けてきたはずの隊員たちは馬に悩まされる。おまけに、がけ道を通るため、馬が暴れて落馬でもしようものなら命がない。隊員たちは、現地の兵士にとけ込むため、急峻(きゅうしゅん)な山岳地帯の隠れ家での生活もともにする。

 アフガニスタンで投入された特殊部隊は、陸軍のスペシャルフォース、いわゆるレンジャー部隊だ。陸軍のデルタフォースや海軍のシールズなど他の特殊部隊とどこが違うのか。本書では次のように説明する。

米陸軍スペシャルフォースは孫子をそらんじる

 Special Forces trained to do something different from everyone else. They fought guerrilla wars. This fighting was divided into phases: combat, diplomacy, and nation-building. They were trained to make war and provide humanitarian aid after the body count. They were both soldiers and diplomat. (中略) They spoke the locals’ language and assiduously studied their customs concerning religion, sex, health, and politics. (中略) The SEALs and the regular Army generally studied none of a country’s languages, customs, or nuances. Special Forces thought first and shot last. (p29)

 「スペシャルフォースは、他の部隊とは違う任務を遂行する訓練を受けてきた。ゲリラ戦を戦うのだ。ゲリラ戦はいくつかの局面に分かれる。戦闘、外交、国家樹立だ。戦争をし、死傷者が出た後は、人道的な支援も実施するよう訓練される。兵士であると同時に外交官でもある。(中略)現地の言葉を話し、現地の宗教や性、衛生、政治に関する慣習を粘り強く学ぶ。(中略)シールズや通常の軍隊は、現地国の言葉や風習、感情の機微をいっさい学ばない。スペシャルフォースはまず先に考え、最後に引き金を引く」

 人質をとってテロリストが立てこもるビルに急襲をしかけるような、単純な特殊部隊とは違う。現地語を習得する高い知的能力を持つだけに、本書では特殊部隊の隊員たちひとりひとりを個性的な人間として描く。例えば、ディラーという隊員については次のような具合だ。

 In his shirt pocket, alongside his toothbrush, Diller carried a dog-eared edition of the poet and warrior Sun Tzu’s favorite aphorisms. Diller had memorized many of them and quoted at will in his West Virginia drawl: “When on offense, strike like lightnin’ from the clouds. All war is deception.” (p74)

 「ディラーはシャツのポケットの中に、歯ブラシと一緒に、使い古した孫子の格言集を持ち歩いていた。ディラーは孫子の言葉の多くを暗記し、ウエストバージニアなまりの気取ったしゃべり方で、すらすらとそらんじた。『攻めるときは、雲から出る雷のように攻めよ。戦いはすべて敵を欺くことにある』」


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