いつ裏切るか分からない現地の兵士たちの中に、少人数で合流している隊員たちは常に不安と隣り合わせでもある。カネに目がくらんだ兵士に捕虜にされ、タリバンに売り渡される恐れがある。
And he feared that his Afghan soldiers might turn him in for the $100,000 ransom offered by the Taliban. That was a lot of money, he knew-practically more than double what he made working for the U.S. Army. (p184)
「アフガニスタンの兵士たちが、タリバンが提供する10万ドルの懸賞金のために、自分をタリバンに引き渡すのではないかと、彼(ある隊員)は恐れていた。かなりの金額だ。実際、アメリカ陸軍から自分がもらっている年間給与の倍以上の額だ」
文字通り読むと、隊員の年収は500万円もないことになる。
国家に尽くし、国家に翻弄される生身の兵士たち
特殊部隊の隊員たちも、機会があると、衛星電話などで戦場からアメリカの自宅に電話をかけていたことも驚きだ。次に引用するのは、カル・スペンサーという隊員が妻にアフガニスタンから電話をかけた際のやり取りだ。
“Where are you, Cal?” 「あなた、どこにいるの?」
“You know I can’t―” 「いや、それは言えない・・・」
“What are you doing?” 「何をしているの?」
“Working, honey.” 「仕事だよ」
“So, where are you calling from?” 「どこから電話しているの?」
“Every time, you know I can’t answer that.”
「いつもながら、それには答えられない」
“I know.” 「分かってるわ」 (p192)
アフガニスタンに潜入した特殊部隊は、あくまでも北部同盟を支援する形で、タリバン掃討作戦を進める。馬にまたがって移動しながらも、GPSを駆使してタリバンの秘密拠点への空爆を導くなど、最先端の装備を持つ特殊部隊の助力で北部同盟は1カ月足らずで、アフガニスタン北部の戦略的に重要な都市マザリシャリフを制圧する。
ところが、マザリシャリフの近郊にある要塞の村カライジャンギに収容していた約600人のタリバンの捕虜たちが反乱を起こし、CIAの工作員が命を落とす。20人足らずの隊員たちは600人のタリバンを相手に激戦を繰り広げる。アメリカ軍側にも負傷者が出たものの、タリバンの捕虜たちの多くも犠牲となった。当時は、捕虜を大量殺害したとして批判の対象にもなった戦闘だが、本書では、思わぬ反撃にあってうろたえ、連絡系統も乱れるアメリカ軍の混乱ぶりを浮き彫りにする。
捕虜たちによる反撃を鎮圧し、アフガニスタンでの戦争の勝利がみえたとき、特殊部隊の隊員たちはウズベキスタンのベースキャンプに、急に呼び戻される。作戦に参加した隊員たちから直接、戦果の詳細を聞きたいというラムズフェルド国防長官のわがままのためだった。
本書はしかし、アメリカによる軍事作戦の単なる礼賛本ではない。エピローグでは、アフガニスタンでの作戦に参加した隊員がイラクにも派遣され、命を落としたケースがあったことも記す。ある隊員は次のように精神を病む。