元米国務次官補で米アトランティック・カウンシル上席研究員のロバート・マニングが、National Interest誌ウェブサイトに12月5日付で掲載された論説において、先の台湾地方選挙での民進党の圧勝、2016年の総統選における民進党勝利の可能性は、中台関係の緊張につながりうる、と指摘しています。
すなわち、11月末の台湾の地方選挙では国民党が大敗した結果、台湾は、アジアで第一の安全保障問題になりそうである。2016年の総統選挙に向け、台湾独立を党綱領に明記している野党民進党が良いポジションにいる。
地方選で民進党の地滑り的勝利をもたらしたのは、経済問題である。ここ数年、台湾のGDPは2%以下しか伸びていない。馬政権が推進した、中台間の経済相互依存は、両岸関係を安定させたが、この中国への依存が国民の反対を呼び起こした。サービス貿易協定に反対した若者主体の「ひまわり運動」が典型である。さらに香港でのデモに対する中国の強硬な態度が中国への不安につながった。中国との政治対話反対論は強まった。それを中国が受け入れられるのか。習近平は就任直後に両岸の政治的不一致は最終的に解決され、世代を超えて残されてはならない、と述べている。
中国共産党は主権回復に優先順位を置いており、台湾は、東・南シナ海の無人の岩よりずっと重要である。中国は民進党とも対話をしてきたが、民進党の対中姿勢は明確ではない。今の両岸対話の基礎である1992年コンセンサス(一つの中国、二つの解釈)を民進党が受け入れるか分からない。中国による力の誇示、緊張が2016年大統領選前に出てくることを予想した方がよい。ここ20年の中国軍の近代化は台湾シナリオのために行われた。接近阻止(A2AD)戦略は米国の前進配備兵力を対象にしている。
習近平と中国共産党にとり、最大の優先順位、正統性の源泉は、市場経済志向の経済改革推進であるが、もう一つの正統性の源泉は、2世紀にわたる屈辱の時代に失われた主権の回復である。問題は、中国がこの二つの逆方向の力をどう取り扱うのか、中国が両岸の現状維持を受け入れられるか、それとも、民族主義と新しい軍事力が台湾に向けられるのかである、と述べています。
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この論説は、台湾で民進党が政治的に強くなっていること、それが中台関係の緊張につながり得ることに警鐘を鳴らしたものです。ただ、台湾問題は、もとからアジアにおける第一の安全保障問題の一つであり、昨年の統一地方選の結果、あるいは、2016年の総統選は、それを再認識させるきっかけに過ぎません。