中国メディアは何を報じているか

2015年2月13日

»著者プロフィール
著者
閉じる

弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

汚職取り締まりは「選択的」で
政敵追い落としに過ぎない?

 議論は現在習近平政権が進める汚職取り締まりを巡って激しく展開された。まず司会者から習近平政権で汚職取り締まりが活発に展開されているものの、汚職は深刻で「制度的腐敗」を治すのは不可能に見えるが、どう見るかと疑問が提起された。

 これに対し、司馬南氏は、中国の汚職は深刻であり、これほど広い範囲で汚職が深刻化したことはかつてないと認めた。ただ、党の18回大会で習近平が党総書記に就任してから共産党は反腐敗闘争を声高らかに展開しており、「虎」も「ハエ」も取り締まり(「虎」は大物、「ハエ」は小物を意味するがどちらも汚職官僚)、汚職防止の制度構築も進めているから「運動式の反腐敗」(大衆運動を奨励する党のキャンペーンのような一時的な活動という意味だろう:筆者)ではないと政府を擁護した。反腐敗で得た成果を肯定すべきであり、徐々に(早急にではなく)解決するのが重要だと擁護している。

 これに対して陳破空氏は真っ向から反対し、汚職取り締まりは恣意的に選択的にやられていると切って捨てる。昨年に軍で16人の「虎」(高級将校)が引きずり降ろされたが、全て総後勤部副部長とか南京軍区副政治委員といった副官であり、メインの司令官は捕まっていないのがその証拠だという。彼によればメインの司令官が清廉潔白なわけではなく、攻略が難しく一気にできないということのようだ。また習近平は薄熙来(重慶市の元トップで中央入りすると目されていた)、周永康(元党中央政治局常務委員)、令計画(胡錦濤前国家主席の秘書)、徐才厚(元軍の事実上のトップ)のような権力への脅威になる者を落としたいだけなので、江沢民派、共産主義青年団派、高級幹部の子弟である太子党派はあまり摘発されていないと指摘する。取り締まりは政敵を一掃しているにすぎないというわけだ。

汚職取り締まりは
スターリン式粛清運動か権力闘争か?

 中共の汚職取り締まりはスターリン式の粛清運動だという主張がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたのをどう見るかという質問に対して、司馬南氏はその考えは受け入れられないと反論した。複雑な政治用語で恐ろしげな状況かのように誇張してスターリン式の粛清と現政権の反腐敗を関連付けるとは言語道断だと批判する。司馬南氏は陳氏が汚職取り締まりに対して悪意ある攻撃していると批判した。

 香港の『鳳凰週刊」誌は周永康や薄熙来等が権力の奪回を目論んで毛沢東路線を復活させようとしたと伝えているが、党内の権力闘争は激化しているのかという質問に対して陳氏はその通りだと権力闘争説を肯定する。権力闘争は今始まったことではなく、毛沢東時代には路線闘争と呼ばれ、鄧小平時代には改革が必要か否か(という二者択一)が迫られた。その結果、江沢民、胡錦濤時代に史上最悪の汚職がはびこってしまうはめになったのだという。取り締まり名義でこのグループ(帮)あのグループと摘発したものの結局は権力闘争だったわけだ。

関連記事

新着記事

»もっと見る