2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月5日

 Diplomat誌のティエッツィ編集員が、1月31日付同誌ウェブサイト掲載の記事で、習近平は人民解放軍を反汚職運動の次のターゲットにしているようであり、これまで歩調がそろっていなかった、文民と軍の規律検査組織が、新たな協力関係を模索する予兆がある、と報告しています。

 すなわち、人民解放軍内の反汚職運動は、既に、徐才厚、谷俊山という2匹の「トラ」を捕えたが、概して、軍においては文民組織ほど活発には反汚職運動は進展していなかった。

 しかし状況は変化している。2014年7月の周永康・元政治局常務委員の立件の後、習近平が人民解放軍を汚職撲滅の次のターゲットにする兆候があった。中国メディアは、強力かつクリーンな軍の重要性を説く記事を続々と配信し始め、そういう傾向は2015年に入っても続いている。1月初めには、中国メディアは、軍高官が関与した16件の汚職事件について報じた。

 楊宇軍・国防部報道官は、1月29日の記者会見で、人民解放軍における反汚職運動の多くの新しい展開について説明した。楊は、中央軍事委員会の査察チームが、今年、全ての主要な軍の組織に対する査察が実施することになろう、と述べた。つまり、軍においても党の文民組織と同様、目標は、「トラもハエも捕まえる」のみならず、汚職行為を防止し懲罰するための法的・制度的メカニズムを実際に構築することにある。それは、予見し得る将来にわたり、反汚職運動が持続されるようなメカニズムを作ろうということである。

 それがうまく行くかどうかは分からない。これまでの反汚職運動の成功は、王岐山・中央規律検査委員会書記に負うところが大きい。しかし、軍には、汚職を検査する自前の組織、中央軍事委員会紀律検査委員会がある。ごく最近まで、両組織の間では協力が欠如していた。

 軍と文民の汚職検査機関の間で協力するための新たな取り組みが出て来てはいる。反汚職運動が始まって2年経ち、中央軍事委員会紀律検査委員が初めて中央規律検査委員会の本会議に出席した。それは、新たな協力の時代の予兆であり得る。楊報道官も、記者会見で、軍事機密が保護されることを条件に、軍側として汚職事件についての透明性を高めることを約束した、と述べています。

出典:Shannon Tiezzi,‘Graft Busters Take Aim at China's Military’(Diplomat, January 31, 2015)
http://thediplomat.com/2015/01/graft-busters-take-aim-at-chinas-military/

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 本論説の主たる論旨は、習近平体制下で反汚職運動が人民解放軍の中でも強まるであろうが、しかし、それらがうまくゆくかどうかはわからない、ということです。


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