これまで、習体制下において、「虎もハエも叩く」という威勢の良い掛け声のもと、薄煕来、周永康、徐才厚など政治局員レベルの幹部を含む多くの人々を訴追してきました。その主たる攻撃対象は、ほとんどが党関係者であり、レベルの高い軍人としては徐才厚や谷峻山に限られてきました。しかし、最近になって、中国メディアも報道しているように、軍内にも摘発の対象を広げようとの動きが出ています。
これまで中国の権力構造の中では人民解放軍は一つの「聖域」でしたから、ここに手を入れることは、軍の強い反撥を引き起こす可能性があり、習近平にとっても容易なことではないでしょう。
これまでの反汚職運動のターゲットとなってきたのは、主として江沢民や胡錦濤につながる勢力であり、習側近の「太子党」につながる人たちは入っていません。その意味では、この運動そのものが権力闘争の色合いをもっており、今回の軍内の汚職摘発も当然その延長線上にあるものと考えられます。
今日の中国における幹部の腐敗・汚職の度合いは、中国側メディアの報道をそのまま信用するかどうかを別として、驚くべきレベルに達しています。徐才厚(前中央軍事委員会副主席)の受け取ったとされる賄賂の額、その放恣な生活ぶりから、党と軍の間に大きな違いがないことが分かります。
かつて中国共産党は「党内の団結、党幹部の廉潔性、効率的な党運営」を誇示してきましたが、今日の中国共産党は、グループ間で分裂気味であり、また、幹部たちの腐敗汚職の程度は法外なものとなっています。
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