2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月20日

 現在ミャンマーが直面する最も重要な課題は、軍がどの程度政治関与の度合いを低めるかでしょう。現行憲法では、連邦議会の議席の4分の1は軍人に割り当てられています。これは憲法改正の拒否権を軍が持つことを意味します。本年11月の総選挙の前に行われるべき憲法改正は、専らアウン・サン・スーチーの大統領の資格問題で論じられています(現行憲法は大統領の要件としていくつか挙げているが、そのなかに子供が外国人でないこととの要件があり、アウン・サン・スーチーの2人の子供は英国籍)が、連邦議会の議席における軍人の比率をどうするかが、それに劣らず重要です。

 社説は、軍は自信をもって権力から遠ざかれ、と言っていますが、あまりに早急な非軍事化は、混乱を招きかねません。ミャンマーにおける軍の政治からの撤退は徐々に行われるべきで、我が国を含め西側は、この点寛容であるべきです。ミャンマーでは少数民族問題ゆえに軍の力が強くならざるを得なかったという経緯があります。

 その少数民族問題では、最近、コーカン族の反乱激化により、中国雲南省に隣接するコーカン地区に非常事態宣言、戒厳令が発令されています。コーカン族は漢民族系です。コーカン族は、数万人と推計され、約350万のカレン族や約90万のカチン族に比べると少ないですが、中国との関係で重要です。コーカン族の指導者は、中国人にコーカン族を支持するよう求める公開書簡を発しています。中国政府もコーカン族側も否定していますが、中国からコーカン族に武器が渡っているのではないかとの疑惑があり、注視していく必要があります。

 イスラム教徒ロヒンギャの問題については、ミャンマーで国民と認められていないのみならず、周辺国からも「経済移民」として難民認定されず亡命が認められないなど、国際的に地位が低いのが実情です。ミャンマーだけに責任を負わせるのではなく、国際社会として取り組む必要があります。

  
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